遣らずの雨 上

『ねえねえ、部内旅行の行き先見た?』


「えっ?そんなメール来てた?」


優子と社員食堂でいつものように
ランチをしている時に聞かれた話題に
うどんを啜りながら答える


はぁ‥‥部内旅行か‥‥。


なんか色々あってすっかりそのことを
忘れてしまっていた。


毎年6月の梅雨時期に行われるのは、
不思議で仕方ないけれど、自由参加とは
いかず私にとっては憂鬱なイベントだ


『皐月はそういうの本当に興味
 ないよね。でも酒向さんがいる今年は
 女子達がすごい楽しみにしてそう。
 部屋割り一緒だといいね。』


「うん、そうなると助かる。」


優子ですら私の傷痕のことは知らない
間柄で、大浴場に行かない理由も
毎回生理を言い訳にして来た。


今年も部屋にシャワーとか付いてると
いいんだけど、なければ1日くらい
入らなくてもなんとなかる。


食堂から戻った私は、パソコンの
部内メールをクリックすると行き先
を確認した



今年は‥‥伊勢か‥‥

マーケティング部全体では12名。
男性は酒向さん、優子の彼の濱田さん、
集計担当の村岡チーム長の3名のみで
ほとんどが女性の部署になる


でも伊勢か‥‥‥。
近いけれど行ったことがない場所だし、
なかなか行けないから楽しみだ。



新しいWEB広告もなんとか通り
毎日他社とのデータや顧客満足度、
オンラインなどの仕事をこなしながら、
酒向さんともいつも通り過ごせている


【むらせ】には仕事帰りではなく、
休日の夜などに時々顔を出せていたし、
酒向さんとは会わずに済んでいる。



友達を辞めたいと伝えてから
もうすぐ1月。


酒向さんを楽しませてくれる
友達がもう出来ているに違いない。



『検査結果も異常はないから、
 また1月分お薬だけ出しておくよ。
 少しでも変化があればすぐに連絡
 すること。僕の番号は登録して
 あるかい?』


旅行前に診察に訪れた病院で
朝日先生の元を訪れた私は、いつもの
薬と念の為不正脈が起きた際の薬も
出してもらった


「登録してあります。
 ありがとうございます。」


『何もないといいが、旅行はリラックス
 して楽しんでおいで。』