遣らずの雨 上

「おはようございます。
 お休みしてご迷惑をおかけしました」


『新名さん!体調は大丈夫なの?』


チームメイトの佐藤さんに1番に
挨拶に向かい頭を深く下げる。


ただでさえGWの休み明けで仕事が
溜まっているのに、穴を開けてしまい
迷惑をかけてしまったのだ


「万全です。あの‥優子と着替えとか
 用意してくださったみたいで
 すみません、助かりました。」


『そんなのいいのよ。私は一緒に
 買い物に行っただけだから。
 はぁ‥‥戻ってきてくれて嬉しい。
 無理せずまたよろしくね。』


封筒に包んだお金は受け取ってもらえず
佐藤さんの優しさにまた頭を下げて
笑顔で頷く。


荷物をデスクの下に引っ掛けると、
深呼吸をして主任のデスクに向かった


「酒向さんおはようございます。
 ご迷惑を沢山おかけして
 申し訳ありませんでした。
 もう大丈夫ですので、これからも
 よろしくお願い致します。」


勇気のいる一歩‥‥
でもこの一歩は私が自分から
やらないといけない大切な事‥‥


上手く笑う必要もない‥‥。
今まで通り仕事としてなら出来る。


『フッ‥‥おはよう。
 無理せず出来ることから始めて
 くれればいいよ。』


酒向さんはこういう人だ‥‥‥。


私なんかよりもずっと大人で、
私のこの勇気も丸ごと包み込んでくれる


1時間以上も外で待たされて、
あんなことを言われても私に対して
一言も責めることもしなかった。


一体私はどれだけこの人に甘えて
過ごしていたのだろうとこの瞬間にも
思い知らされる


迷惑をかけた優子にも元気な姿を
見せてからデスクに戻ると、大きく
深呼吸をした。


さてと‥‥
溜まってる仕事を整理して順番に
片付けていかないと、佐藤さんの
サポートができない。


滞っていたWEBのサイトに進捗の情報
もまずは流さないと‥‥


デスクに溜まっていたファイルや資料を
手に取ると、明らかに集計チームの
ものが紛れていて、通路を挟んだ
向こうに座る相手を睨む



「佐藤さん、ちょっと席を外します。」


ファイルを2冊手に取ると、
会いたくもない相手の元に近づき、
いつもされるのと同じように、デスクに
ファイルをワザと音を立てて置いた


『は?何!?』


「私の仕事じゃないものが紛れて
 たのでお返しに来ました。」


『ッッ!!』


いつもは言い返さないから驚いてる?
そうだよね‥‥3年も我慢したんだから