遣らずの雨 上

「分かりました‥‥。またお世話に
 なりますがよろしくお願いします。」


お父さんともまだ話しが出来ていない‥


きっと聞きたいことや言いたい事が
山ほどあると思うのに、昔から優しい
性格の為かなり飲み込んでくれたはず


縁を切りたかった訳じゃない‥‥。
居場所もなくなった私にとっては、
どちら側に行く事も許されない気が
してしまっただけ。


『うん、傷口の経過も良好だ。
 この後心エコーとレントゲン、
 MRIを受けたら終了だよ。』


「はい‥ありがとうございました。」



全ての検査を受け終えて病室に戻ると、
お父さんが私の部屋にいたので、
車椅子を押してくれていた看護師さんに
お礼を伝えてからドアを閉めた


『検査を受けてくれてありがとう。
 朝日君も会いたがっていたからね。
 疲れただろう?横になりなさい。』


「うん‥‥‥」


ベッドのリクライニングを起こしてくれ
るお父さんを黙って見つめてしまう‥。


産まれてから心配しかかけてこなかったのに、長年連絡をしなかったのだ。


『ふぅ‥‥‥色々お前とは話さないと
 いけないが、まずはお母さんとは
 会っているのか?
 入院のことを知らせたら、7年間
 家に帰っていないから知らないと
 言われた。高校を卒業して大学の
 費用も出していた身としては、
 知らない事が多すぎてな‥‥。
 今は1人で暮らしているのか?』


10年前に私が原因で離婚する事に
なってしまった両親のことを思うと、
胸が苦しくなる。


「うん‥‥アルバイトして貯めたお金で
 生活は何とか出来てた。
 お父さんが大学の費用を出してくれた
 から、家賃と光熱費だけなら
 なんとかなったから‥‥。」


『家を出た原因は母親か‥‥‥。
 お前を置いて出て行って悪かった。』


「ううん‥‥お父さんは悪くないよ。
 悪いのは‥私の体だから‥‥。」


未熟児で産まれてすぐに心臓に病気が
見つかり、家に帰れる事もなく手術を
繰り返したものの、熱はよく出したし、
不正脈なども頻繁に起こり、長くは
生きられないと言われていた。


その私を救って今こうして外の世界で
生きれるようにしてくれたのは、
お父さんが居たから‥それは分かってる



毎日繰り返し願った夢が叶い、感謝を
しないといけないのに、私にはそれが
素直に伝えられないでいる。