遣らずの雨 上

何もしなくても目立つ人なのに、
女性客が多いキッチンコーナーに居れば
視線を嫌でも浴びてしまう


『偶々来たら新名さんが居たから
 驚かせて悪かった。それ買うの?
 俺も使ってるやつだ。』


「えっ?どっちがいいですか?
 この機会に乏しい調理道具を
 増やそうかと。」


主任は料理をよくされるって言ってたし
こういうのは、使ってる人の意見が
1番の口コミなので是非聞きたい


『こっちかな‥‥。ちなみにこれも
 オススメだよ。』


そんなに買うつもりはなかったのに、
使いやすそうなアイテムを選びすぎて
荷物が増えてしまった


『いいのが沢山買えて良かったな。
 俺もまな板が新調できたから
 来て良かった。もうこれで帰る?』


「いえ、あとは食品を買ってかないと
 です。一緒に選んでくださり
 ありがとうございます。買ったから
 には料理頑張らないとですね‥」


『家まで送ってあげるから、沢山
 買うといい。今持ってるのも
 貸してごらん。』


「えっ!?あ!酒向さん!?あの、
 それくらい持てますから!」


紙袋をヒョイっと奪われてしまうと、
歩き出した主任を小走りで追いかける


上司に荷物を持たせるって‥こんなとこ
誰かに見られたら‥‥‥


『そうだ。せっかくだから料理
 教えてあげようか?それなら材料も
 色々アドバイス出来るし、どう?』


どう?って‥‥
教えて貰えるのはありがたいけど、
それって私の家でってことだよね?



「酒向さんって暇なんですか?」



都内に確か戻るって言ってたけど、
帰ってきたばかりなんじゃ‥‥‥。
まだ4日間休みはあるけれど、そんな
貴重な休みを部下と過ごしても
いいのかな‥‥‥


『フッ‥‥暇だよ。
 新名さんほら行くよ。』


オッケーしてないのに、買い物かごを
カートにセッティングする姿に
大きな溜め息を溢しつつも、仕方なく
アドバイスを受けながら買い物をした



「あの‥‥キッチン狭いですよね。」


来客用の駐車場に停めた主任に荷物を
一緒に運んでもらい、本当にあれから
私の家に酒向さんが来てしまっている


親ですら来たことのない私の部屋に、
自分以外の人が居ることにも違和感で
落ち着かないけど、それが酒向さんだから余計にかもしれない


『想像以上だな‥‥。これが全部
 君の趣味なのか?』