えっ？

荒木部長と‥‥隣の人は‥誰？


『全員揃ってるかい？
　3月に結婚のため異動された
　鵜飼主任に代わり本日付けで
　東京本社より名古屋支社に
　来てくださった酒向　慧君だ。
　酒向君は本社でマーケティングに
　おいてかなり優れた成績を残して
　いるからみんなもこの機会に
　沢山学び成長に繋げてくれ。』
　

えっ！？本社？
そんなすごいところからわざわざ
名古屋に？


『初めまして、酒向です。
　名古屋は初めてですが、皆さんと
　マーケティング戦略が出来ることを
　楽しみにしてます。』


『キャー』
『な、なに！！？あのイケメン！！』
『嘘でしょ！？』
『素敵‥モデルみたい‥‥』



部署内が一層ざわつき、他部署の
女性達も廊下から一斉に駆け寄り
新しい主任を取り囲んでいる


「あっ！ちょっと成瀬さん！？」


乱雑にファイルを私のデスクに置くと、
成瀬さんも主任の方へと向かっていき、
取り残された私は目の前のファイルを
チラッと開けて盛大な溜め息をこぼす


最悪‥‥‥っ！！
これ‥先週までのじゃん‥‥。


金曜日に早く帰る余裕があるなら、
先週のうちに出来ただろうに‥‥。
年度を超えたファイルに苛立ちしか
沸き起こらない。



さっきの表情とは別人なほどに
頬を染めて主任に群がる成瀬さんに、
口元が歪みそうになりつつも新しい
主任を私も遠くから眺めた


みんなが騒ぐのも無理はない。
確かに‥誰が見ても申し分ないほど
容姿端麗に思うから。


背もとても高いし、色素の薄さから
日本人離れした顔立ちにも思える。


優れた人なら、近年伸び悩むこの
東海地方が何か変わるかもしれない。


私的には成瀬さんのやる気を
最大限に上げてもらえると
仕事が捗るし助かるんだけどね‥‥。


『はい！みんな自分の部署に戻って！
　それじゃあ、酒向君は今日1日は、
　全員の仕事内容を見て改善点などを
　把握してコミュニケーションを
　大いにとってくれたまえ。』


『はい、そうさせていただきます。』


えっ？



荒木部長に頭を下げる姿を見ていると、
こちらをチラッと見た酒向主任と
目があってしまった


しまった‥‥もしかして見過ぎた？


変な目で見ていないとしても、ジロジロ
見られたら誰だっていい気はしないのに
成瀬さんの事を考えていたら、
ボーっとしてしまっていたのだ。


ペコっと頭を下げてから自分のデスク
チェアに腰掛けると、変な緊張からか
溜め息が出てしまう


鵜飼主任‥‥元気かな‥‥


前任の鵜飼主任は、旦那さんのお仕事の
都合でここ名古屋から遠く離れた
広島へ行ってしまったのだ


同じ女性でも凛としていて、厳しくも
優しくて素敵な人だったな‥‥‥。


見た感じ酒向さんも優しそうで、
親しみやすそうだけど、なんとなく
私にはハードルが高く、
話しにくいタイプにも思える


イケメンに罪はないんだけど、
なるべくああいうタイプとは関わりたく
ないものだ。