『‥‥‥‥』


会議室で佐藤さんと2人で考えた
HPの企画案を、スクリーンを使い
主任にプレゼンしている間の沈黙に、
唾をゴクリと何度飲み込んだだろう


2人で予定を合わせ、店舗に赴き写真を
数えきれないほど撮影し、夜9時過ぎ
まで残業する日も多かった


『特別な日に着たい1着にちなみ、
 コーディネートを今までの倍以上
 掲載しています。
 あとはパーソナルカラーに基づき、
 イエローベース、ブルーベースに
 分け、スプリング、サマー、オータム
 、ウィンタータイプのコーディネート
 を載せることで、自分に似合う
 服が買いやすくなればいいなと。
 10分ほどで無料診断できる
 パーソナルカラーの項目と、HPや
 スタイリングからオンライン通販に
 繋がるよう改善しました。
 以上が企画案になります。』


佐藤さんの発表が終わると、
2人で顔を見合わせ笑顔が出た。


パーソナルカラーの資格を持っている
企画開発部の社員さんにも協力を
願い、作成するのは大変だったけど、
以前のものとは全く違うHPになった
と思う。


『佐藤さん、新名さん』


『「はい!」』


『いい企画案でした。
 修正は必要ですが、このまま
 上に報告をしようと思う。
 よく頑張ったな、お疲れ様です。』


嘘‥‥企画が通った?


主任の言葉に横に立つ佐藤さんを見ると
目に涙を浮かべている姿に私も目頭が
グッと熱くなる


思うように進まなかった日もある。


佐藤さんのサポートがちゃんと出来てるか不安にもなった。


それでも2人で作り上げた一つのものが
こうして形として残ることに、かけて
きた時間が無駄ではなかったんだと
心から思う


『ありがとうございます‥』

「ありがとうございます。」


立ち上がった主任が私達に笑顔を見せて
くれ、2人で思わず嬉しくてハイタッチ
をしてしまった


『お疲れ様でした。新名さん
 今日は早く帰れるからゆっくり
 休むんだよ?本当にありがとう。』


「佐藤さんも休んでくださいね。
 お疲れ様です。」


久しぶりの定時。
外が明るい時間に帰れるなんて最高だ。


GW目前にはなってしまったものの、
3週間をかけていいものが出来たから
やり切った気持ちの方が今は大きい。


こんな日に直帰するなんて、なんだか
興奮して落ち着かないや‥‥


「お疲れ様でした。お先です。」


みんながいるフロアに退社の挨拶を
するなんていつぶりだろうか‥


疲れはたまっているのに足取りは軽く、
地下鉄に乗り込むと向かう先はやっぱり
【むらせ】だった