遣らずの雨 上

昨日は暗かったし遠くからだったから
良かったけど、こんな近くで泣いてる
ところを見られたくない‥‥


『毎日休まず植物の世話するヤツに
 真面目以外の言葉はねぇけどな。
 ‥‥‥偶には何もせず休めよ。
 そうじゃないと息出来なくなる。』


「ッ‥‥ごめっ‥‥」


だって‥‥

何かしてないと、自分の居場所が
何処にもない気がして不安になる


役に立たなくても、自分が出来る事が
1つでもあるならやらないとって‥‥


凪に背を向けると、涙が溢れないように
上を見上げる


いつも全然喋らないのに、こんな時に
沢山話すなんてズルい‥‥


『ん‥‥』


えっ?


左手にコツンとぶつかった何かに
視線を落とすと、凪が差し出した
ティッシュBOXに驚くと気が緩み、
何故か笑えてきた


「私‥‥ここが好きだから居たい‥。」


『‥‥ん‥‥‥そうしろ。』



凪の側はいつも音がなくて静かだけど、
だからこそ見える気持ちもある


ここに来る事を自分で選んで自分で
決めた。


偶然かもしれないけど、弱い自分を
強くしてくれる凪の言葉に泣きながらも
嬉しくなって笑顔が出てしまう



それからも、凪とは相変わらずで、
私はグリーンショップで接客と事務仕事
を行い、凪は隣の工房で家具作りに没頭
する毎日を送っていた


お弁当をいつもの場所に置いたら
綺麗に食べてくれたし、私にはその
いつもの日常がとても幸せだった


「いい天気‥‥」


4月に入り、工房近くの川沿いには
桜が咲き、日中は暖かい日が続き
植物達の日光浴も気持ち良さそうだ


中庭の空いている場所が勿体ないからと
桜の木を植え、その下にはチューリップ
が花開き風にゆらめいている。
 

ネモフィラ、菜の花、ヒヤシンスなど、
季節によってお庭が華やかになるのが
とても嬉しい‥‥


ここに来て、自分はファッションより
植物が好きだと改めて実感してる。


泥だらけだって気にしない。
長靴だって平気で過ごせる。


ここが名古屋の中心地だったら、
こんなに伸び伸びと過ごせていないと
思うと、もう戻れない気もしてしまう




『すみません、お店の中を見ても
 いいですか?』


「はい!どうぞ‥‥ッ‥‥」


『‥‥‥‥新‥名‥‥新名!』


ガチャン!!!


手に持っていた鉢植えが手からすり抜け
足元に落ちた音で我に返り、目の前に
立つ懐かしい人に動悸が激しくなる


なんで‥‥ここに酒向さんが‥‥‥