遣らずの雨 上

30分もかけて連れてきてくれたけど、
凪さんは本当にマイペースで悪気が
ないからむしろ見てて面白い


笑顔でそう答えると、ホッとするように
小さく息を吐き店のドアを開けてくれた


別に私なんかにそんなに気を
使わなくても大丈夫なのに‥‥


2人でお店に入ると、凪さんは
迷わずサンルームがあるテラス席に
向かい私もそこに座ると、そこから
の景色の綺麗さに驚いた


「スゴイ眺めがいいね‥‥」


『ん‥‥‥昨日泣いてたし。』


「えっ?それで連れてきてくれたの?」


『‥‥‥‥』


チラッと私を見た後、すぐにメニューに
視線を落とした彼に体の力が抜けて
口からフッと息が溢れる


やっぱり私には凪さんが怖い人に
なんてとても思えない‥‥


クールで落ち着いてるし、端正な
顔立ちは際立つけど、滅多に見せない
その優しさが私は逆に嬉しいって思う



「ありがとう‥‥凪さん。」


『‥‥さんもいらねぇ。凪でいい。』


「‥‥うん‥‥分かった。」


雇い主に失礼かもしれないけど、
相手がそう望むなら、
ストレスにならないように叶えたい


名前を呼び捨てにしたからって、
他は何も変わらないし、私はきっと
これからも感謝しながらあの場所で
生きていく



美味しいランチを一緒に食べてから
家に戻る前にスーパーに寄ってくれ、
荷物まで運んでもらった。



「あの‥‥部屋見つかったら
 出て行くから、それまでここに
 本当に居てもいいの?」


食料品を冷蔵庫にしまいながら、
ダイニングチェアに腰掛けた彼に
もう一度問いかけた。


羽鳥さん達の前ではああ言ってたけど、
ちゃんと本音を言って欲しかったのだ


面接を受けにきたのに、住む場所が
見つからず、見ず知らずの相手を
こうして住ませてくれている


信頼だってして貰えてるかも
分からないのに、嫌じゃないのかな‥




『‥‥‥お前‥真面目だよな。』


えっ?


部屋にあったシェフレラの葉を指で
撫でると、私を見て少しだけ笑った



「私‥真面目かな‥‥。」


真面目だったら、周りの人達をあんなに
傷つけた来なかったと思うから、
そんな事言われた事もないし、自分で
そう思った事も勿論ない


勝手に自己完結させて、相手の好意から
逃げてここにやってきた身勝手な
自分とまだ向き合えてさえいないのに‥


ヤダ‥‥考えてたらまた目頭が熱く
なってきてしまった‥‥