遣らずの雨 上

裏の平家は倉庫だった場所を凪さんが
住めるくらいに時間をかけて内装を
リフォームしているから、よくそこに
友達が来ているみたい。


『凪だってそう思うだろ?』


『‥‥‥‥好きにすればいい。』


えっ?


ちょうど店員さんが飲み物や料理を
持ってきてくださったので、ハッキリと
聞こえにくかったけど、温かい烏龍茶
を私の前に置いてくれる時に一瞬
目が合った。


『俺らも凪が1人だと色々心配だから、
 皐月ちゃん居てくれると心強いよ。
 声かけないと寝ずに仕事してたし、
 食べたり食べなかったりだからさ。
 面接してもその場で辞退する人や
 1日で辞める子ばかりだったからね』



「そんな‥‥勿体無いですね‥‥。
 こんなに素敵な場所なのに。」



富士山は毎日見ても飽きないくらい
壮大な景色を届けてくれるし、空気は
美味しいしこんな場所に来られて私は
幸せだけどな‥‥‥


隣に座りビールを飲みながら私を見る
凪さんに笑顔でそう答えると、口元が
少しだけ笑った気がした



『‥‥‥食え。』


「はい、いただきます。」


静岡に来たのに静岡おでんを食べるのは
初めてで、味噌を付けて食べず、だし粉
や青のりをかけてみんな食べている


「熱っ‥‥‥ハフ‥美味しい!!」


大根は勿論のこと黒ハンペンや牛すじ、
じゃがいもなど食べたことのないものも
出汁が染みててとても美味しい。


『美味しそうに食べるね。初めて?』


「はい。名古屋にいたのでこの食べ方は
 初めてですけど好きです。」


『良かった。他にも美味しいものが
 沢山あるから凪に連れて行って
 もらいな?』


凪さんと?


今回は偶々誘ってくれただけだし、
休みの日まで私と一緒なんて申し訳ない
から、色々探して行ってみよう‥‥


それにしても本当に美味しい‥‥


こんな近くにお店があったなら、
もっと早くに来ればよかった‥‥。
雰囲気も落ち着くし、何より食事が
美味しい‥‥。


【むらせ】の味が恋しいからこそ、
ここでも通いたいお店が増えるといいなと思う。


修さんと千代さん‥元気かな‥‥‥。
今年は寒かったから風邪をひいてないと
いいな‥‥



『ねぇ、皐月ちゃんは彼氏いないの?』


「えっ?‥‥い、いませんよ!
 私こんな感じですし女らしさも
 ないので。」


頭の片隅にいまだに消えない存在が
浮かび上がり、一瞬胸が苦しくなる
ものの、笑顔でそう答えた


恋人とか‥‥そういうのはもういい‥。
今は本当にそう思ってる