遣らずの雨 上

ん?と眉間に少しだけ皺を寄せて
見てきた凪さんからお弁当箱を受け取る
と、いつも座るロッキングチェアに
もたれながらシマネトリコの葉を指で
触っていた



とっつきにくい人だけど、私はとても
居心地が良くて、言い方は悪いけど、
余計な事を聞いてこない分ありがたい
と思えている


『‥‥お前今日‥夜って暇?』


えっ?


休憩時間中に話しかけられる事なんて
まずないから、凪さんの方を見て驚いた
顔をしてしまう


「暇ですけど‥‥」


『連れ達と飯に行くけど来る?』


連れって‥‥
あのいつものメンバーだよね‥‥


嫌いじゃないんだけど、なんていうか
いつもテンションが高めな人たちで
ついていけない感が半端ない‥‥


なんなら、凪さんだってこんな感じ
なのによく付き合えてると思うほどだ



「お酒は飲めませんので、
 それでも良ければ‥」


薬の効果が悪くなるからアルコールは
極力控えたいのもあるけど、慣れていない人達とお酒を交わすほど強くない


『‥ん‥仕事終わったら声かける。』 


「あ‥‥はい。」



ビックリした‥‥‥‥‥


そんな内輪に誘って頂けた事にもだけど
、時間外の凪さんと過ごしていい
んだと思えたら素直に嬉しいと思える


午後の仕事を終え、レジ締めと事務仕事
をしていると、工房の電気が消え、
作業エプロンを外した凪さんがスマホで
誰かと話していた。



『終わった?』


通話中なのに聞いてきたので、
コクコクと首を縦に振ると、
また電話で話しながら外に行って
しまったので、2階に行き
パパッと着替えてから外に向かった。


‥‥‥‥まだ電話中だ


仕事の話かもしれないし、声をかけるのはやめよう‥‥


ドアを閉めて鍵をかけると、
ちょうど通話が終わったのか、
凪さんと目が合った


『待たせて悪い‥‥行くぞ。』


「大丈夫です、待ってませんよ。」


3月と言えど夕方以降は肌寒く、
上着を着てきて大正解だ。


凪さんは寒くないんだろうか‥‥


白のオーバーサイズのシャツにデニムを
合わせたラフな装いだけど、背も高く
捲った袖から覗く腕は筋肉質で逞しい


シンボルツリーを植え替えたり、
重たい木材を扱ってるから、見た目よりもとてもいい体格をしている


特に話すこともなく歩くものの、
歩幅を合わせてくれているのか
常に横を歩いてくれてる事に、何故か
自然と笑みが溢れた