カラカラカラ‥‥
おはよう‥‥‥今日は‥温かいね‥
4月からの新年度を迎える日に相応しい温かな春の風が窓から部屋に流れ込む
年明けから例年よりも寒さが続き、
遅咲きの桜がようやく芽吹いた。
通勤路の両脇がようやく
華やかに彩り始めててとても綺麗‥‥
そして、見上げた空の色は
白群色と清々しい気持ちのいい朝だ
窓を開け空に向かって話しかけると、
両手を頭上で組みうーんと伸びをした
もう今日で社会人になって3年目。
ここに住み始めてからは7年目。
あの日から一度も帰れていない場所に
想いを馳せるけれど、私は帰れない‥。
近所にある美味しいベーカリーショップ
で買った胡桃パンとホットミルクで
朝食を済ませると、急いで出勤の
支度をして家を出た。
ガチャ
いつもと同じ景色
混み合う満員電車
人を避けながら歩く通勤路
仕事は充実してるし、ここ最近は
自立も出来てなんとか生きているけど、
あの日から前に進めているようで、
時間が止まってしまっているのも確かだ
『新名さんおはよう。』
「おはようございます、佐藤さん。」
アパレルメーカーのオフィスは
私服のためか毎日がとても華やかだ
個性的なオリジナルティに溢れた派手な
人から、営業や重役ともなれば勿論
スーツの人もいて不思議な空間に
最初は思たけど、慣れてしまった。
neLu【ネル】
20代から30代をターゲットにした
女性用アパレルブランドは、ここ数年の
オンライン販売の加速により、海外
からも注目され店舗を増やしている
『今日も頼むわね。』
「‥‥‥‥またですか?」
マーケティング部に勤める私の主な
仕事はWEBの広報でもある。
SN◯や、顧客にセールや新作などの
案内や、◯ンスタ、店舗の情報管理を
行いアップしている
なのにも関わらず、他の担当から
回されるデータ管理の入力の多さに
日々悩まされているのだ。
『またなんてそんな言い方しなくても
新名さんと私の仲でしょう?
ここにいられるだけでもありがたく
思って欲しいわ。』
甘ったるい香水の香りが届き、
デスクに置かれた手の真っ赤な
ネイルが施された長い爪から書類を
抜くと、嫌々上を見上げた
成瀬 柚香(なるせ ゆか)
悲しくも彼女とは同期入社で、
同じ部署配属になってしまったが、
彼女の父親は重役でもあり、我儘に
育てられたのが嫌というほど目に浮かぶ
ふわふわに巻かれた長い髪。
大きな瞳にふっくらとした唇、
細いのにスタイルは良く、私とは
完全に正反対のタイプだ
「暇ではないですが、これ以上話したく
ないので預かりますよ。」
『はぁ?こっちだって!』
耳障りな声にイヤホンをしようかと
本気で思っていたら、部署内がざわつき
私達も視線の先に目を向けた。
おはよう‥‥‥今日は‥温かいね‥
4月からの新年度を迎える日に相応しい温かな春の風が窓から部屋に流れ込む
年明けから例年よりも寒さが続き、
遅咲きの桜がようやく芽吹いた。
通勤路の両脇がようやく
華やかに彩り始めててとても綺麗‥‥
そして、見上げた空の色は
白群色と清々しい気持ちのいい朝だ
窓を開け空に向かって話しかけると、
両手を頭上で組みうーんと伸びをした
もう今日で社会人になって3年目。
ここに住み始めてからは7年目。
あの日から一度も帰れていない場所に
想いを馳せるけれど、私は帰れない‥。
近所にある美味しいベーカリーショップ
で買った胡桃パンとホットミルクで
朝食を済ませると、急いで出勤の
支度をして家を出た。
ガチャ
いつもと同じ景色
混み合う満員電車
人を避けながら歩く通勤路
仕事は充実してるし、ここ最近は
自立も出来てなんとか生きているけど、
あの日から前に進めているようで、
時間が止まってしまっているのも確かだ
『新名さんおはよう。』
「おはようございます、佐藤さん。」
アパレルメーカーのオフィスは
私服のためか毎日がとても華やかだ
個性的なオリジナルティに溢れた派手な
人から、営業や重役ともなれば勿論
スーツの人もいて不思議な空間に
最初は思たけど、慣れてしまった。
neLu【ネル】
20代から30代をターゲットにした
女性用アパレルブランドは、ここ数年の
オンライン販売の加速により、海外
からも注目され店舗を増やしている
『今日も頼むわね。』
「‥‥‥‥またですか?」
マーケティング部に勤める私の主な
仕事はWEBの広報でもある。
SN◯や、顧客にセールや新作などの
案内や、◯ンスタ、店舗の情報管理を
行いアップしている
なのにも関わらず、他の担当から
回されるデータ管理の入力の多さに
日々悩まされているのだ。
『またなんてそんな言い方しなくても
新名さんと私の仲でしょう?
ここにいられるだけでもありがたく
思って欲しいわ。』
甘ったるい香水の香りが届き、
デスクに置かれた手の真っ赤な
ネイルが施された長い爪から書類を
抜くと、嫌々上を見上げた
成瀬 柚香(なるせ ゆか)
悲しくも彼女とは同期入社で、
同じ部署配属になってしまったが、
彼女の父親は重役でもあり、我儘に
育てられたのが嫌というほど目に浮かぶ
ふわふわに巻かれた長い髪。
大きな瞳にふっくらとした唇、
細いのにスタイルは良く、私とは
完全に正反対のタイプだ
「暇ではないですが、これ以上話したく
ないので預かりますよ。」
『はぁ?こっちだって!』
耳障りな声にイヤホンをしようかと
本気で思っていたら、部署内がざわつき
私達も視線の先に目を向けた。



