拾いました。

あの後からショッピングモールに行って、色んなお店を回った。

その買い物中、何度も女性たちが振り返り、緋刻を見て頬を染めていく。確かに、このスーツ姿を見たら誰もが格好良いと思うだろう。すらっとした身のこなしに、可愛らしいルックスのギャップ。これはもう、世の女性たちが黙っている訳がない。

だが、緋刻と比べられて『何だあいつは』『似合ってないわ』だの『可愛くないよね』だの言われたのは、さすがに悲しかった。

分かってるもん。それくらい、言われなくたって自覚してますよーっだ! ……というのは、置いといて。

たくさん歩き回り、疲れたのだろう。今はバスの心地良い揺れで眠ってしまった緋刻。寝顔をちゃんと見たのは初めてで、気が付くと、あまりの綺麗さに見入っていた。

長いまつ毛が淡い影を作り。薄く開いた唇からは、規則正しくすーすーと寝息が聞こえる

多分、緋刻は女装とかしたらすっごく可愛いんだろうなあ。なんてことを思いながら見ていると、ずるずると緋刻の頭が重力に逆らえなくなっていき。

こてん

私の肩に寄り掛かってきた。緋刻の目が覚める気配はない。

一瞬驚いたものの、起こしたら悪いなと思い動きを止めた。……あれだけ動き回ったんだもの、疲れるのも当然か。


「お疲れさま、緋刻」


隣には、可愛い狐さん。その横にいる私。何とも不思議。端から見れば、人に見える、この狐さんの秘密みたいなものを。知っているのは、……私だけなんだ。

そんな、自分にしか分からない小さな優越感に浸りながらバスの外を眺めた。

日は傾き、空が赤とオレンジのコントラストで美しく光っている。早く目覚めた蒼白い月が、顔を覗かせていた。