拾いました。

重苦しい空気を切り裂くように、まっすぐと通った声の主は。


「ひ、緋刻…」

「申し訳ありません。嘘をついて欲しいと頼んだのは、僕です」

「?! 貴様…っ!」


かっとなったのか、お父さんは緋刻の胸ぐらを掴み立たせた。


「貴様! 何を言っているのか、分かっているんだろうな?! 華留を利用したんだぞ! ふざけんじゃねえ!!」


口が荒くなる父を今まで見たことがなかった私は、少し怯えていて。だけど、そんな場合じゃない。


「ち、違う! 違うのお父さん! 彼が頼んだ訳じゃないし、私は利用もされてない! ただ……っ!」


うまく口が動かない。


「ただ、緋刻には言えないことがあって……」

「言えないことって何だ華留! 答えろ!!」

「僕には過去がありません」


唖然とする、お父さんとお母さんに構わず続ける。


「ひ、緋刻、待っ「ですから、何をどう答えろと言われても、答えることが、できません……」

「こんな奴に、大切な娘さんを任せたくないことなど重々承知の上です。ですが、それでも。それでも、彼女と……華留と一緒にいたいんです」


お父さんの手が、するっと緩んでいった


「……家は、あるのか」

「ありません」

「ご両親は」

「いません」

「そうか、ならここに住め」

「はい。………え?」

「「え?」」


私とお母さんの声が、重なる


「聞こえんかったか? ここに住めと言ったんだ」

「で、ですが……」

「もう何も言わなくて良いから。私たちも色々と詰め寄りすぎたな。……すまない」


「お父さん……」


「“お父さん”と呼ぶなああああああ! ……彰(あきら)さんと呼べ」

「あ、彰さん…」


「お父さん、ありがとう……」

「ふ、ふんだ! そんな可愛い顔してもだめだもんね!! 認めた訳じゃないもんね!」


どこのツンデレだ。でも、お父さん。……ありがとう。