拾いました。

「ばかばか! 変態痴漢色魔女ったらし!! 私のファーストキスがぁああ……っ。あほちん!!」


どんっ どんっ

男の胸あたりを何度も叩く


「華留……その“ふぁーすときす”って大事なもの? そうだったなら、本当にごめんなさい……。俺、よく分からなくて……」

「何言ってるの、分からない訳ないでしょ?! それとも何? 今まで全く何にも知らずに生きてきたっていうの?!」


そう言うと、戸惑いつつ男は答えた。


「……うん、そう。何にも知らないんだ。ごめん、華留……そんなに怒るなんて思わなくて……。俺、人と関わって生きてこなかったから……何が正しいのか、何が間違っているのか、よく分からないままで……」

「な、に言って」


だって、そんな人。ほとんどいるわけな…


「言ったよね……、俺は“狐”でもあるんだって……。あるはずの名前も……記憶も、思い出も……ない」


「……あ……っ」


だから、あんなに悲しい表情をしていた、の……?

しばらくの沈黙が残る。

——私に出来ることは、何? こんな、ちっぽけな私に。この変質者と呼べるであろう男の人に、言葉にできない気持ちが沸き上がってる。

……あ、あった。まず私に出来ること。それは


「あのさ、貴方の好きな色って緋色……だったかな?」

「……え? う、うん」

「そっか。なら……うん、決まりました。貴方の名前は今日から“緋刻(ひとき)”です!」

「ひ、とき……?」


貴方に名前をあげること。