「だから、落ち着け。
嬢ちゃんのせいじゃない。」
「でも……!」
「頼むからしっかりしてくれ……
小包の差出人は見たか?」
「ちらっと……深夜の通販番組からの品物だった。」
同意を求めるように椎名を見る。
「恐らく」とそれに応えた。
「そうか……」
沈黙―――。
斉藤には何か聞きたいことがあって、ただそれを聞いていいものか迷っている……
そんな風に感じた椎名は、じっと沈黙に耐えた。
「……奴から何か接触は?」
やっと発せられた言葉にびくりと反応する樹。
「……何も。」
「そうか……」
斉藤は安心したような、しかし何処か気落ちしたような微妙な反応を示した。
二人の妙な態度に椎名が堪らず口を開く。
「『奴』……?」
「……坊主には関係のない話しだ。」
有無を言わさぬ物言いに、椎名は大人しく黙るしかなかった。
樹も何も言わずに神妙な顔で俯いている。
「とにかく、何か変わったことがあったら、すぐに言うんだ。」
「分かりました。」
そう言い残し、斉藤は捜査に戻って行った。
もしかすると斉藤は樹の様子を見に来ただけなのかもしれない……
斉藤の背中から椎名は何となく、そう感じ取った。
(似てるのかな―――…)
もう、遥か昔の遠い記憶に残る、口が悪く、不器用だが優しい父の面影を斉藤に重ねた―――
