それから、数日はお互いに資料を漁り、めぼしい情報は交換するような形で捜査を進めて行った。


「いーつきちゃん♪」


「なぁんですか、大阪さん」


その日も樹と椎名は机の上に資料を山積みにして調べ物をしていた。


そこに大阪が嬉しそうに身を乗り出して来た。


「今度、休み合わせて一緒に行こうよ。」


そう言って差し出したのは絵画展のチケットだった。


「あ、その人知ってます。

凄く不思議な絵を描く人ですよね。

数学的だったり、有り得ない図形を描いたり……」


それは、イギリスの平面の正則分割や一風変わった遠近法を使う画家の作品展だった。


「好きなんですか?」


「……ん」


本当に好きなようで、樹は作業の手を止め、チケットを見つめている。


「ありがとうございます。」


そう言って樹は大阪が持っていたチケットを2枚とも取ってしまった。


「あぁっ!?ちょっと樹ちゃん!」


「遠慮なく2回行かせてもらいます。」


「そんなぁ〜!僕の話聞いてたぁ!?」


そんな二人のやり取りが椎名に平穏を感じさせた。

生温いこの世界に苛立ちさえ覚える。


「椎名、みーけーん」


「え?あ……」


坂東の声ではっとし、慌てて眉間を隠す。


「椎名は真面目だからなぁ。
二人にまともにかまっちゃいけねぇや。」


「あー!坂東さん酷い!

そんな風に思ってたんですか?」


「冗談だよ、冗談!」と坂東が笑うのと同時くらいに本部のドアが叩かれた。