今、目の前にあるその顔が、椎名の記憶にあるそれとなかなか合致しなかったために、思い出すのに少し時間がかかった。
井原正義は椎名と同期で厚生支局に入り、椎名はERSA、井原は警視庁麻薬取締特別捜査隊に配属された。
同期の中では一番気の合う友人であった。
「ひでぇなぁ、あんなに仲良くしてたのによー」
「悪い……だって、お前、まるで別人だぞ。」
「まぁ、少し痩せたかな。」
少し、どころではない。
春先までの井原を思い出せば思い出すほど別人のようである。
「椎名は元気そうだな。
今の子、パートナーなんだろ?なかなか可愛い子じゃないか。」
婦警に案内されて行く樹の背中をアゴで指し言う。
「……そうか?」
「まぁ、お前の好みのタイプではないな。
山添さんに俺を紹介してくれよ。いいだろ?」
「……お前、ロリコンだったのか。」
「ロリコンって言うな。それに、同い年にロリコンも何もないだろうが。」
確かにそうだが……
「ロリコンがどうしたって?」
気がつくと樹が片手にファイルを抱えて立っていた。
「な、なんでも――…」
「初めまして。椎名と同期の井原正義といいます。」
椎名の言葉を遮って、井原が手を差し出し割り込んできた。
コイツの女性への対応の速さは尊敬を通り越して呆れるものがある。
