そういえば、椎名はこの1ヶ月、ほとんどの時間を樹と一緒に過ごすハメになっているが、彼女の「友達」に会うことは殆どない。
彼女は1日中「仕事」ばかりだ。
鳥居舞はそんな彼女の数少ない「友達」なのかもしれない……
ふと、そんな風に思った。
「用が済んだなら早く……」
「分かってるよー…。堅いんだから、しぃちゃんは……。」
この人が自分の上司か、と溜め息をつく。
「椎名、椎名千秋!」
突然、大きな声で名前を呼ばれ、驚いて振り返ると見知らぬ男が笑顔で立っている。
「……すみません……以前、何処かで――?」
「何言ってんだよ。俺だ、俺。井原正義!」
「…………井原!?」
