冬に抱かれる

数分ほどそのままの状態で私たちはお互いの体を強く抱きしめていた。半ば私が強引に抱きしめていただけかもしれないけどあの人は背中をとんとん優しく叩いてくれた。
しばらく抱きしめ合ううちに少し苦しくなって力を解くと、あの人は
「お腹すいてる？ご飯にしよう。遅くなったけど」
とコンビニの袋を持ち上げながら言った。
昨日のココア以外何も口にしていない事に気づいた私のお腹はマヌケにぐぅーっと鳴った。
恥ずかしさで赤くなった私の顔を見てあの人は笑っていた。笑うと見える八重歯が印象的で不覚にもかわいくて私もつられて笑った。
夕食はカップラーメンとおにぎりというなんとも炭水化物メニューだったけどお腹がすいた私はあっという間に平らげた。
あの人は毎日コンビニ飯かラーメンかだということを今までメッセージで話していてわかっていたから明日はご飯を作ってあの人の帰りを待っていようと思った。
「女の子ってこういうの、好きでしょ？」
そう言いながらあの人は冷蔵庫からプリンを取りだした。正直プリンは大好きだしすぐにでも食べたかったけど、あの人が私のことを考えてくれていることがとても嬉しくてしばらく受け取れなかった。
昨日からあの人の優しさが心に染みて、あの人を思う気持ちがどんどん加速するのを感じる一方で、お世話になるばかりで何もしていない自分の不甲斐なさに気づいた。
お礼を言い、俯きながらプリンを食べだした私を肩肘をつきながらあの人は見ていた。
食べるところを好きな人にまじまじと見られるのは少し気恥しかったけどあの時に食べたプリンの美味しさはいつまでも忘れられないと思う。