服装と、ファミレスに着いたことを伝えたあと寒さと緊張で震えが止まらなかった。
乾燥して頬に張りついていた涙がまた溢れてきた。
会う前にこんなに泣いてしまう弱い自分にまた嫌悪感がさしてうずくまろうとした時、懐かしくて何度でも聞きたくなる大好きなあの人の声が頭の上で聞こえた。
「はなちゃん、はなちゃんだよね?寒いよおいで行こう。」
顔は見ていなかったけど声であの人だと分かった。
やっと会えた。
今までメッセージと電話でしか話していなかった相手が今目の前にいる。
返事も出来ずに私は黙って手を引かれたままあの人の後ろについていった。初めて触れた手は寒さでかじかんでいてあまりよく分からなかったけれど温かくて大きかった。初めて親以外の男の人の手を握ったから緊張で何度も手が離れそうになったけどあの人はその度に握り返してくれた。車につくまでぎゅっと握られた手を離さなかった離したくなかった。フードを深く被ってマスクをつけた私の顔は車の中のライトではきっと見えなかったと思う。私もあの人の顔を見ていなかった。助手席に乗った途端に眠ってしまっていた。いつもは眠れない夜を過ごすのにこの時はすぐに眠りについていた。