あの人とは知り合って3年になっていたけど、声と名前と住んでいる地域くらいしか個人情報は分からなかった。
顔も見たことなかったけど私はあの人からの今の返信を見て何がなんでも会いに行きたくて、がむしゃらに駅まで走ってちょうどホームに着いた時に来た電車に乗りこんだ。送られてきた住所の最寄り駅まで行くかもわからない電車に確認して乗るほどの理性など無かった。
家から離れたことで緊張が緩んだのと、頭を撫でる暖房の風が気持ちいいのもあり、私はいつの間にか眠りに落ちていた。
自分のスマホが床に落ちる音で目が覚めて辺りを見回すと乗った時はまばらにいた乗客も、今は2人ほどしかいなかった。その人たちもすぐに次の駅で降りていった。
しばらくぼーっとしていると
ご乗車ありがとうございました。まもなく終点の○*▼◎駅です。お出口は右側です。どなた様も落とし物お忘れ物なさいませんよう、ご注意ください。本日もご利用頂きありがとうございました。尚この列車は___________
終点放送が流れた。
終に終点まで来てしまっていたのかと思うと同時にあの人に連絡しなきゃとスマホを開くと親からのたくさんの着信とメッセージがあった。ブロックしておけばよかったなと思いながら、あの人からのメッセージを見るためにアプリを開くと、あの人からも沢山着信があって心配するようなメッセージも来ていた。どうやら寝落ちして1時間ほど経っていたらしく、その間一切返信がなかった私を心配していたらしい。いつもはありえないくらい返信が遅いのにこういう時に本気で心配してくれる彼の優しさがとても嬉しかった。