しばらくネットサーフィンをしている間にまたウトウトして眠っていたらしい。脱衣所の扉が開く音で目を覚ました。
「まだ髪乾かしてなかったの。風邪ひくよ」
そう言いながら彼はドライヤーのスイッチを入れて私の髪の毛を乾かし始めた。誰かに髪を乾かしてもらうなんて久しぶりすぎてびっくりしたけど彼が撫でるように優しく私の髪の毛を乾かしてくれて心地よくてまたウトウトしていた。

「はなちゃんほんとよく寝るね。もうすっかり俺ん家に馴染んでんじゃん。
はい次は交代。俺の髪乾かしてちょーだい」

男の人の髪の毛を乾かすのは初めてだったから少し緊張したけれど、柔らかくてくせっ毛の彼の髪が愛おしいし、大好きな人の髪を乾かすなど昨日の自分は思いもよらなかっただろうなと思いながら乾かしているといつの間にか乾き終わっていた。
ドライヤーの電源を切ると音のない静かな世界が再び訪れた。
少し気まずいような気がして時計をちらりと見ると深夜1時を過ぎていた。彼はバイトで疲れているだろうし早く寝たいだろうと思い立ち上がろうとする私の手を彼は掴んだ。そしてそのまま私を抱っこするような形で座らせると正面から急に抱きしめられた。昨日までは自分からハグしにいっていたけれど急にあの人からハグされるのは初めてで、緊張して硬直してしまった。
「あ、…ごめん……………。
何かそのつい……ごめん。」
そう言いながら申し訳なさそうに私の体を剥がそうとする彼を私は止めた。
「いいです。このままがいい、このままが安心するから………。」