もう嫌だった。
こんな自分が生きていることが、何も手につかずただひたすら何かにすがるような思いで生きることが苦しかった。周りと比べて自分の劣等感に押しつぶされて毎日ベットの中で泣く夜も、眠れないまま迎える朝も来て欲しくなかった。誰かに聞いて欲しくて慰めて欲しくてでもそんなことは周りに言えるはずもなくてひたすら溜め込んでいた。ただ逃げたいという思いが日に日に積もり、ある日私は耐えきれなくなって家を飛び出した。
12月の冷え込んだ夜の風が私の頬を、肌を刺した。そんな痛みが感じないほど私の心はそこに無かった。このまま電車に飛び込んで死のうかと思った。飛び降りようかと思った。だけど私は忘れられなかったあの人のことを。
だから連絡した。唯一の光だった。
「助けてください」
送信済みの青い吹き出しが夜の闇の中で一際目立って眩しくて、目を細めた時、携帯が揺れた。
「どうした?」
大好きなあの人がすぐに返信をくれた。バイト中かもしれなかったしこれから予定があったかもしれないのにすぐに返信がきてくれたことに驚いて少し動揺してそれと同時に涙が溢れてきた。気づけば通話マークを押してあの人に電話をかけていた。半年ぶりに鳴るコール音は懐かしくてドキドキする気持ちを思い出させてくれてでもそんな気持ちよりも自分を覆う別の黒くてマイナスな気持ちが膨れ上がって涙が止まらなかった。今思えば電話に出たあの人は泣きじゃくる私にとても困惑していたし急に連絡して泣き出す私に嫌悪感を抱いていたかもしれないけど、ただ一言だけ私に言ってくれた
「何があったかわからないけど家においで
。今から住所送るから」