ラブソードから     「ノリオくんのクリスマス」

 宝船から聴こえる、優しい琵琶の音色にうっとりし、全てを受けいる様に空を見上げます。
 七福神達は各々の力で、人々に幸福をもたらすよう切っ掛けを与えます。
 漁業や食物の恵を。長寿の命を。健康であることを。

 ノリオくん達にしか見えない煌びやかな光の粉は、民衆に降り注ぎました。
 大黒天は大笑いをしながら、打出の小槌を降りました。

「わっはっはっはっはっ」

 沢山の目に見えないウサギが溢れ出し、各家の居間に上がると鏡餅に姿を変えます。
 ニッコリ微笑む布袋樽が団扇を扇ぐと、荒ぶる人々の心が、穏やかになっていきます。
 先ほどまで喧嘩をしていた夫婦も、今は寄り添い頬と頬を合わせています。

「辛い今年を乗り越え、来年は一緒に初詣に行こう」

「あいよ、お前さん」

 江戸の夜空に浮かぶ宝船は、大きな月明かりに照らされ、民衆の目に幻想的に映っていました。
 夜空に月が浮かび、何処からかほとばしる花火と、雨雲がないのに雪が降り続けています。

 そんな中、今年が終わる年の瀬に、七福神が現れたからです。
 来年こそ良い年が始まると、町民の期待を膨らませます。

 風神はノリオくんに言いました。