ラブソードから 「ノリオくんのクリスマス」

　騒ぎ出す声に長屋の住人達は、外に飛び出します。
　一人の住民が走り去る殿様を見て、声をかけていました。

「鼠小僧……さん？」

　先ほど配った小判を手に持っていましたが、殿様の姿を確認すると、両手で拝むように顔の前にかざしていました。

　長家からは、大勢の人々が小判を持って喜んでいます。

「ありがとうー鼠小僧さん」

　どうやら悪者から金品を持ち出し、貧しい人に配る天下の大泥棒、鼠小僧と勘違いしたようです。

「ここであったが百年目。鼠小僧、今度こそお縄を頂戴しろい」

　張り上げるおかっぴきの声に、子供達も目を覚まし外に駆け出てきました。　
　枕元の野菜を持ち、精一杯お礼の言葉をかけます。

「ありがとう鼠小僧さん。これでお節料理が食べれます」

　殿様は子供達の言葉を聞き、走りながらも悔し涙を流しています。

「違うのじゃ。よは、そんな良い者じゃない」

　宝船が見えると、七福神達は手招きをしています。

「早よ乗り込め、捕まるぞ」

　ですが足の遅いお殿様やお姫様の元に、おかっぴき達はどんどん近づきます。
　もう駄目だっと諦めると、強い風が吹きました。
　全員が浮かぶ様に舞上がり、宝船に転げ落ちます。

　七福神は転がるノリオくん達を受け止めると、お姫様だけ傘お化けの足に捕まり、フワッと着地しました。
　良かったと、ノリオくんは皆の無事を確認していましたが、殿様はガックリと肩を落とし、座った状態で泣いています。
　サンタクロースは殿様の背中に手を当て、何やら言葉をかけていました。

「You can always start over」

　沈黙が続く宝船に、突如夜空に響く声が聞こえました。