ラブソードから     「ノリオくんのクリスマス」

 心配の中、今度は夜回りをする、拍子木の音が聴こえました。

 カンッカンッ「火の用ー心」 カンッカンッ

 ノリオくん達は身を隠し、息を潜めます。
 覗き込むと、おかっぴきを先頭に、町民が二人夜回りをしている様です。
 後ろの町民二人は、愚痴をこぼす様に、現在の生活状況を話していました。

「うっ〜寒い。しかしこの御時世。景気が悪くて、やってらんねーよなー」

「あっー全くだ。ちげーねー」

「景気が悪い、税金が高いのはよ、少しぐらいは我慢できるよ。だけど生きてくための食品が高くて買えねーつーのは如何なもんかねー」
 
「あっー全くだ。ちげーねー」

「農家の人からも税金を沢山取るからよー、儲からないから後継もいねえつー話だよ。外国に頼るのもいいが、ここは日の本だぜ、米も野菜も作らねーのは、いけねーや。俺は殿様に言ってやりてーねー」

「あっー全くだ。ちげーねー」

 おかっぴきは振り返ると、二人に注意をします。

「滅多なこと言うんじゃねえぞ、世の中のことなんか、何にも知らない殿様なんだからよ」

「へーーい」

 殿様は話が聞こえると、申し訳ない気持ちになり言葉を失います。

 左近時は、しょげる殿様を気にし「無礼者」っと小声で呟くと、夜回りの前に飛び出そうとしました。 殿様はそれを、力弱く止めます。

「良いのじゃ左近時。よは間違った行いを、またしておった様じゃ」

 思い描いていた現状が違うことに、考え込んでいると、先ほどの家の女の子が物音に気付き、出てきていました。

「だーれ?」