ラブソードから     「ノリオくんのクリスマス」

 慰めながらも部屋の中を見渡すと、クリスマスだけでなく、年末というのに新年を迎える準備もまだのようでした。
 部屋の中は内職の傘が散らかり、台所にはお節のお重の準備もまだの様です。
 ノリオくん達は不安を覚えながら、枕元に準備した野菜を。殿様は小判を一枚、大人の枕元に置いていきます。

 隣の家も同じように寂しい状態でした。
 子供達の枕元に野菜を置こうとすると、そこには手作りのおもちゃが置いてありました。

 男の子の枕元には、木の棒で出来た刀。女の子の枕元には、折り紙で作った人形が置いてありました。
 どちらも自分で作ったように歪で、少しくたびれています。
 のっぺらぼうと、ろくろっ首はそれを見つめています。

 ここには、プラスティクで出来た三両編成の電車の模型も、子供用お姫様ドレスや、先端がハート形の変身スティクもありませんでした。

 ノリオくん達は不思議がりながらも、準備したお芋やプレゼントを置き、外に出て顔を合わせます。
 殿様がヒソヒソ声で言いました。

「何じゃ、正月を楽しみにしていないのかの? 生活から活気が感じ取れぬ」

 お姫様も残念そうに言葉を漏らします。

「生活が苦しいのでしょうか。食料品も置かれてないように思われます」

 神妙な中、長屋のどここらか夫婦喧嘩する声も聞こえ、全員が身体をびくつかせます。

「お前さん、不景気だっていうのに、お酒ばっか飲んで」

「酒でも飲んでなきゃ、やってらんねいやい」

 喧嘩の声にのっぺらぼうは怖がり、殿様の羽織を掴みます。