「絃士さんは、マルが亡くなった時、わざわざ花を持ってマルに会いに来てくださったんです。火葬の時も付き添ってくれて、わたしと一緒に泣いてくれました。マルが居なくなったことを受け入れられず、泣いてばかりのわたしの心に寄り添ってくれて、心の整理をする為の時間をくれたし、食欲のないわたしにスープを作ってくれました。そして、、、姿は見えなくても、マルはわたしの心の中にいる、、、そう教えてくれたんです。」
颯さんはハンドルに額をつけたまま、わたしの話に耳を傾けていた。
そして、わたしが「わたしは、、、絃士さんに心を動かされたんです。また、、、人を好きになる心を、、、」と言うと、颯さんは顔を上げ、フッと笑うと、「やっぱりあいつには、敵わないなぁ。」と言った。
「悔しいなぁ、、、。久しぶり、いや、初めて心から好きだと思える人に出会えたと思ったのに、、、。俺は、優しさも思いやりも、包容力も、、、絃士より劣ってる。ひかりさんを幸せに出来るのは、絃士だったかぁ、、、。俺が、ひかりさんを幸せにしたかったのに。」
颯さんはそう言うと、サッパリしたような表情をして、「ひかりさんが絃士を好きなのは分かりました。でも、たまには、焼肉に行くのに付き合っていただけますか?」と言った。
「はい、もちろん!颯さんの奢りなら。」
「当たり前じゃないですか!もちろん、俺が出しますよ。それじゃあ、帰りましょうか。」
そう言い、颯さんが車を出そうとした時、わたしは「あっ!」と言った。
「え!何ですか?!」
「あのぉ、帰るのはわたしの家じゃなくて、絃士さんの自宅までお願いしてもいいですか?」
「えぇ?!もう同棲してるんですか?!」
「いやいや!同棲ではないです!マルとの思い出がある家に帰る勇気がまだなくて、少しの間、お邪魔させていただいてるだけで、、、」
わたしがそう言うと、颯さんは悔しそうな表情を浮かべ、「このぉ、絃士め。あとで文句のLINEでも送ってやる!」と言うと、絃士さんの自宅方向へと車を走らせてくれたのだった。



