そして、その空気を破ったのは、わたしからだった。
「話したいことって、それですか?」
わたしがそう言うと、颯さんは予想外だったわたしの近況に戸惑っている様子で「いえ、違います。」と言った。
「ひかりさん、、、」
「はい。」
「ひかりさんがそんな状況とは知らず、、、いや、こんな状況だからこそ、伝えたいんですが、、、」
颯さんはそう言い、こちらに身体を向けると、真剣な眼差しで「俺は、ひかりさんが好きです。ひかりさんを支えたいです。だから、、、お付き合いしていただけませんか?」と言ったのだった。
わたしは颯さんの言葉に驚かなかった。
だって、前に絃士さんから"颯は、ひかりさんのことが好き"と聞いていたからだ。
わたしは俯くと、颯さんに向かい「ごめんなさい。」と頭を下げた。
「わたし、、、好きな人が居るんです。」
わたしがそう言うと、颯さんは切なげな微笑みを浮かべ、「絃士ですね?」と訊いた。
「、、、はい。」
「やっぱり。ズルいよなぁ、、、自分の秘書にして、あんな良い男がそばに居たら、好きにならないわけがない。」
「颯さん、、、それは違いますよ?」
「違うって?」
「わたし、、、本当は、もう恋愛はするつもりはなくて、人を好きになることも諦めていたんです。」
「それなのに、なぜ?」
「絃士さんが、、、わたしの心に寄り添ってくれたからです。」
わたしの言葉に颯さんはハッとした表情をして、それからハンドルの上部を両手で掴み、そこに額をつけた。



