「社長。」
「ん?」
「さっき言ってた、"渡さない"って、どうゆう意味ですか?」
わたしがそう訊くと、絃士さんは「あぁ。」と思い出したように言い、「そのままの意味ですよ?」と言った。
「そのままの意味?」
「はい。僕はひかりさんのことが好きです。そして、颯もひかりさんのことが好き。だから、お互いに譲れないって意味です。」
えっ?
絃士さんが、わたしを好き?
「でもわたし、もう恋愛する気ないですよ?」
「男運が悪いって言ってましたもんね。」
「恋愛はもう懲り懲りなんです。だから、家族のマルと2人で平穏に暮らしていくのがわたしにとっての幸せなんです。」
「んー、そこを振り向かせるのが、漢(おとこ)としての腕の見せどころですよね。」
「男としての、腕の見せどころですか。」
「あ、オトコって普通の"男"じゃなくて、漢字の漢の"漢"の方ですからね?」
絃士さんの言葉にわたしは笑い、「なるほど。」と言った。
「僕もずっと仕事ばかりしてきて、恋愛とは無縁のまま生きていくのかなぁ〜なんて思ってたんです。でも、颯に誘われて人数合わせで合コンに参加したら、ひかりさんと出会えて、、、また人を好きになるってゆう気持ちを思い出したんです。」
絃士さんはそう言うと、微笑み「人を好きになる気持ちって、、、こんなに素敵な気持ちだったんだなぁって。ひかりさんが思い出させてくれたんですよ?」と言った。
すると、そこに注文してきたハンバーグが熱々の鉄板にナポリタン、ブロッコリー、ジャガイモと共に乗せられて運ばれてきた。
「さぁ、いただきましょうか。」
「はい。」
ハンバーグが運ばれてきて話しが遮られたが、わたしは絃士さんの言葉に何と返したら良いのか分からなかった為、このタイミングで良かったと思った。
「ん!美味しい!」
「美味しいですよね。喜んでもらえて良かった。」
わたしたちは早めのランチを楽しみ、そのあとはすぐに会社に戻り、会議資料の作成の続きを再開したのだった。



