食事が終わり、お店を出ると颯さんの車に乗り、わたしの自宅まで送ってもらう。
颯さんは運転をし、前を向きながら「それにしても絃士の奴、、、ひかりさんを自分のそばに置きやがって。ズルい。」と呟くように言った。
「だから、わたしは物じゃありません。絃士さんのそばは働きやすいですよ。」
「なんかムカつくなぁ〜。」
「桃華なら、喜んでずーっと颯さんのそばに居ると思いますよ?」
「俺は、桃華ちゃんじゃなくて、ひかりさんが良いんです。」
そんな話をしていると、わたしの自宅のアパート付近まで来て、わたしは「あ!あの灰色のアパートです!」と言った。
颯さんはアパートの前で車を停めてくれると、「今日は突然のお誘いだったのに、お付き合いいただき、ありがとうございました。」と言った。
「いいえ。こちらこそ、ご馳走さまでした!颯さんのいいお話も聞けて良かったです!」
わたしはそう言うと、「送っていただいて、ありがとうございます。じゃあ、お疲れ様でした。」と言い、車を降りようとした。
すると、「ひかりさん。」と颯さんがわたしを呼ぶ声が聞こえ、ふと振り向いた。
わたしは一瞬のことで時が止まったように感じたが、気付けばわたしは颯さんと唇を重ねていた。
颯さんはゆっくりと唇を離すと、驚くわたしを見つめ、「それじゃあ、お疲れ様でした。」と言い、少し恥ずかしそうに微笑んだ。
わたしは、いまだに何が起きたのか頭が追いつかず、「それじゃあ。」と言って車を降り、颯さんの車を見送った。
え、、、今、キスされた?
わたしは両手で自分の口を覆うと、段々と颯さんの唇の感触を思い出し、恥ずかしくなっては急ぎ足でアパートの階段を上ったのだった。



