「はい、これ。ひかりさんの社員証です。」
わたしは首から下げるストラップが付いた社員証を受け取ると、そこにはわたしの名前とその上には"社長秘書"と書かれていた。
「ここを通る時は、社員証をタッチしてください。駅の改札と一緒です。」
そう言って、樋井さんは社員証をタッチし、通って見せた。
わたしも真似して、社員証をタッチして改札みたいな機械の間を通る。
「わぁ、凄い。」
「それじゃあ、行きましょうか。」
「はい。」
大きなビルの為、すれ違う人が多く、その度に挨拶をする。
エレベーターは当然満員状態で、樋井さんとわたしは12階で降りた。
「12階は社長室、会議室、面談室、接待部屋があります。他の社員たちは11階で働いてくれていて、僕たちは基本的に12階に居ることがほとんどです。」
「はい、分かりました。」
「ひかりさんには、僕のスケジュール管理と会議の準備などをお願いすることになると思います。あとは、店舗巡回がある時も付き添いをお願いします。」
「はい。」
そして、樋井さんはあるドアの前で立ち止まる。
「ここが社長室。僕の部屋です。」
そう言い、ドアを開ける樋井さん。
中は、ドラマで見るような"The 社長室"といった感じで、わたしは緊張してしまった。
「どうぞ、座ってください。テーブルの上に契約書が置いてあるので、記入をお願いします。」
「あ、はい。分かりました。」
わたしは黒い皮のソファーに腰を下ろすと、目の前に広がっていた契約書に緊張して上手く動かない手で記入していった。



