一輪のバラード


耳元で鳴り響くコール。

わたしの心臓は身体中に響く程ドキドキしていた。

そのうちにご飯を食べ終わったマルがわたしの膝の上にやって来る。

まだ仕事中かなぁ。
そう思い、電話を切ろうとした時だった。

「はい、もしもし。出るのが遅れて申し訳ありません。」

あ、出た。

「あ、いえ、突然電話をかけてしまってすみません。お忙しいのに。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。それで、何かありましたか?」
「あのぉ、、、こないだの件で、、、お返事をしようと思いまして、、、。」
「もしかして、僕の秘書にお誘いした件ですか?」
「、、、はい。」

わたしの膝の上ではマルがわたしを見上げていた。

わたしはマルの頭から背中を撫でながら、樋井さんに「その件、お受けさせていただいてもいいでしょうか?」と言った。

「え!本当ですか?」
「はい、マルのことを考えたら、有り難いお話なので。」
「ありがとうございます!では、今の会社の退職が決まりましたら、またご連絡いただけますか?電話でもLINEでも構いませんので。こちらは、いつひかりさんがいらっしゃっても良いように準備しておきますから。」
「わかりました。」

こうして、わたしの転職が決定した。

社長秘書なんて経験はない。

しかし、今の会社なんかより条件は確実に良いし、給料が上がれば、マルにもっと美味しいものを食べさせてあげられる。

わたしは早速、次の日に今の会社側に退職を申し出て、退職届を書いた。