一輪のバラード


「颯さんって、患者さんと向き合って、心に寄り添って治療してます?」

わたしが突然そんなことを言い出すので、颯さんは「えっ?」と驚いていた。

「颯さん、患者さんの病気のことしか診てないんじゃないんですか?心のケアとかしてます?」
「僕はカウンセラーじゃありません。それに心のケアは看護士に任せています。医者の仕事は、病気を治すことです。」
「あぁ、、、やっぱりそうゆうタイプかぁ。」

わたしがそう言うと、颯さんは「医者にそうゆうタイプとか、あるんですか?」と言いながら、お肉を焼肉続けていた。

「患者さんって、"手術"って聞いたら不安になると思いませんか?」
「まぁ、なるでしょうね。だから、手術前には不安を和らげる為に安定剤を使ったりしますよ。」
「そうじゃなくて!患者さんの不安を一番和らげられるのは、安定剤ではなくて、お医者さんの言葉だと思うんです。患者さんの心に寄り添った言葉をかけてあげることで"あぁ、この人になら安心して手術を任せられる。"と思ったり、"この先生にお願いして良かった。"とか思うと思いませんか?手術ってなると、お医者さんと患者さんの信頼関係が一番大切だと、わたしは思います。」

わたしはそう言ったあと、ビールを一気飲みした。

「信頼関係、、、」

そう呟きながら、颯さんはお肉を焼く手を止め、どこでもない宙を見上げていた。

「あ、ごめんなさい。医療のこと何も知らないクセに偉そうなこと言って。失礼しました。」
「いえ、、、ひかりさんの言葉を聞いて、確かになぁと思いました。執刀するのは看護士ではなく医師であって、患者さんたちは医師を信じて任せてくれるわけですから、信頼関係は大切ですよね。」

颯さんはそう言うと、パッと表情が明るくなり「ひかりさん、ありがとうございます。僕、ハッキリ言ってもらわないと分からないタイプなんで、指摘してもらえて良かったです!」と言い、再びお肉を焼き始めると、「あ、これもう大丈夫ですよ!」と言いながら、わたしのお皿に次々と焼きあがったお肉を入れていったのだった。