焦っていると急に目の前が暗くなって、柑橘系の香りに包まれた。


あれ、名雲くんに抱きしめられてる、の……!?



「はぁ、それわざと誘ってる?……いや丸山なら天然か」


「な、なんでぎゅーしてるのっ…?」


「そんなの、丸山が可愛かったから」



名雲くんが、私の顔をのぞき込んでくる。


顔見ちゃだめ…!



「ははっ耳まで真っ赤じゃん」


「……いじわる」


「いじわるって言い方もほんとに可愛い」



ぎゅーってもう一回強く抱きしめてくる。そして名残惜しそうに私を離した。



「もう時間だから教室戻るわ。また明日」



名雲くんは、歩いて去ってしまった。


な、なんだったの今の……。


顔の熱が冷めるまで、私は教室に戻れなかった。