中学生の私は祖父が嫌いだ。

何でかって怒りっぽくて気に入らないことがあるとすぐに怒鳴るからだ。

その祖父には7つも年の離れた妹がいてその妹を
たいそう可愛かったそうだ。

私は祖父に妹がいるのは知っていたが会ったことがないだからどのような人か知らなかった。

ある日祖父の家へ赴くことがあったときいつもの怒りっぽく怖い祖父ではなく弱々しく泣いている姿があった。

事情を聞くと妹の裕さんにガンが見つかったとのことだった。

祖父が泣いているのと親戚の病気が見つかったという
報告に私は二重に驚いた。

そこからというもの私が祖父の家に
行くたびに裕さんの話をし泣いてしまうといった感じで少しずつ元気が失われってしまっていた。

その話の中では元気だった裕さんが薬の副作用に
苦しんでいることだったり
一人地方で暮らしている寂しさなどが伝わり胸が痛い
思いだった。

その中裕さんは地方から「もう会えなくなるかも知れない」との思いでこちらへ来てくれることになった。

初めて会うから緊張していたけどそこにいた人は綺麗でとても病に侵されている人とは思えなかった。

私達はたくさんの話をした。実は幼い頃に会っていた事や祖父から送られた私の写真が闘病の支えになっていたことなどを―

去り際に裕さんは封筒を出して言った「これは友達と遊んだりしてこれからのために使ってね」と現金の入った袋を差し出した。

「貰えないです」と言おうとしたら
抱きしめられ
「産まれて来てくれてありがとう」と
一言私はふいに泣きそうになってこれからどんだけ
苦しくてもこの言葉を思い出して頑張ろうと本気で
思った。


それから数カ月後に裕さんは
亡くなった―


訃報を聞いたとき一番先に思い浮かんだのは祖父の顔だった。私はすぐに祖父の家に行くとやはりそこには涙で頬が濡れている祖父。

祖父のことが正直嫌いだった。
すぐ、感情的になるところが怖いだけど…

祖父だって心が無いわけがないたった一人の妹を早くに亡くしてしまったのだと言うことを思うとやるせなくなった。
祖父は語った。
裕さんは優しくて強い女性だったと私もそうなれるようと強く思った。

12月25日に祖父の家に郵送で荷物が来た。

その差出人が裕さんだと言うので慌てて向かった。祖父は泣き笑いして裕からのプレゼントだと渡してくれた。

中を開けるとメリークリスマスと書かれたプレートとアイスクリームが入っていて裕さんがどんな思いでこのプレゼントを用意してくれたかを思うと止まらなかった。

こんなにも優しい私の未来を信じて
くれる人がいる―それはほんとに
素晴らしい事だと思う。

始めは何も知らなかった。
何を考えてどんな人なのかいや、
考えようとしていなかった。

私はこの出来事を思い出を忘れて
しまわないように前に向かって進んでいく―