「私のこと、綺麗な名前みたいだね。似合っているよ。そう言ってくれたじゃないの」 大学生のとき― 一度だけそう言ってくれた。 「私はこの名前が嫌だった。雨や月のように、美しい人―。そう連想するような、名前」 「でも、あなたは違った。内面も見てくれた。私はただ嬉しかった」 浩輔は何も言わない。 「私は月のような人になりたかった」 泣き笑いのような顔。 「でも、もう無理でしょう?」 浩輔は雨月を見た。