The previous night of the world revolution4~I.D.~

「まず、あなたは何者なんです?」

「俺の名は、ルシード・キルシュテン。シェルドニア人だ」

「シェルドニア人だってことは知ってますよ」

そんな変な訛りのルティス語で喋られたら、嫌でも分かるよ。

成程ルシード君ね。そんな名前だったのか。

「俺達をこの船に手引きしたのは、あなたですか?」

「あぁ、俺だ」

後ろのルルシーから、爆発的な殺気が膨れ上がった。

全くルルシーったら気が早いんだから。

手引きしたのがルシードでも、首謀者がルシードとは限らないじゃないか。

「目的をお聞かせ頂いても?」

「それが、我が主の命だからだ」

ほら見たことか。

やっぱり、ルシードの後ろに何かがいるのだ。

「じゃああなたは、そのご主人様とやらの命令で、俺達をこの船に導いた、と?」

「そうだ」

「あなたのご主人様は何者で、何を考えてるんです?」

「それは、これから我が主に会って、直接聞いてくれ」

今ここでは話せない、と。

何だ、勿体ぶるなぁ。

駄目元だが、ちょっと脅してみるか。

「…知ってます?俺達って、マフィアなんですよ」

「あぁ、勿論知っている」

「そうですか。なら、あなたを捕らえて目玉を抉り出したら、あなたも喋る気になると思いません?」

にっこりと微笑んで、そう言ってみたのだが。

案の定、ルシードは眉一つ動かさない。

やっぱり駄目かぁ。

ま、『青薔薇連合会』の幹部三人を嵌める役に選ばれたともなれば、それなりに肝が据わってるのは当然だな。

「やりたいのならやってみれば良い。だが、この船は元々、我々のものだ」

しかも、逆に脅しをかけてくる始末。

自分一人を嬲り殺しにしようとも、この船に乗っている乗組員は全員お前達の敵なんだから、余計な抵抗はしない方が良いぞ、と。

全くその通りじゃないか。

「あぁそうですか。なら、結局あなたのご主人様に会わない限りは、何も教えてもらえないってことですね?」

「そうだ」

「あなたのご主人様は何処にいるんです?この船は、何処に向かってるんですか」

それくらいは、教えてくれても良いだろう?

「シェルドニア王国に」

そして、ルシードはあっさりと答えた。

…やはりシェルドニア王国か。

「成程。そこであなたのご主人様に会うまで、この船でしこたま洗脳されろと、そういうことですね?」

「あぁ、そうだ」

潔いじゃないか。

まぁ、俺達に拒否する権利はないからな。

こいつを殺したところで、船を沈めない限りは洗脳は解けないし。

船にいる人間を全員ぶっ殺す…というのも手段の一つではあるが。

結局は船から降ろしてもらわなければ、洗脳は解けない。

…成程ね。