The previous night of the world revolution4~I.D.~

奴が首謀者であるのかどうか、断定は出来ない。

でも、少なくともこの一件に、何らかの形で関わっているはずだ。

「誰が…一体何の為に、こんなことを…」

「…聞いてみます?事情知っていそうな人に」

「…は?」

唇を噛むルルシーに、俺は笑顔でそう言った。

試しに、ちょっと尋ねてみようじゃないか。

「どうせ今も聞いてるんでしょう?ねぇ…シェルドニア人のなんちゃってガイドさん」

俺は、扉の向こうに向かって…敢えてルティス語で言った。

すると。

「…気づいていたのか」

例の青年が、静かに客室に入ってきた。

…やっぱりな。

「気配は上手く消せてましたよ…。いるかいないかは賭けでした」

でも、多分盗み聞きしてるだろうと思ってたよ。

わざわざ、客室に盗聴器を仕込むくらいだからな。

ルリシヤに盗聴器壊されたもんだから、仕方なく立ち聞きしてやろうと思ったんだろう。

ともかく、こいつがクロなのは確定だな。

やけに『白亜の塔』を勧めてくる訳だよ。

俺達を洗脳したくて堪らなかったんだろうな。

「お前…!お前がルレイアに悪夢を見させたのか…!」

ルルシーが、シェルドニア人の青年を睨み付けた。

親の仇と言わんばかりの剣幕である。

「まぁまぁルルシー、落ち着いてくださいよ」

「落ち着いてなんかいられるか。こいつが首謀者…あるいは、首謀者と関わってるなら、こいつを締め上げれば…」

「えぇ。それも良い手ですけど」

でも多分、この人を締め上げても無駄だと思うんだよな。

俺達はもう罠にかかってるんだから。

船を降りない限り、身の安全は望めない。

「とりあえず彼から話を聞きましょうよ。あなた、ルティス語は話せますね?」

「…あぁ」

「俺達三人に、八つ当たりで嬲り殺されたくなかったら…正直に話してください」

「あぁ。そのつもりだ」

こうして。

俺はようやく、このシェルドニア人の正体を知ることになる。