The previous night of the world revolution4~I.D.~

「…この『ホワイト・ドリーム号』が何処かおかしいことは、俺も分かってる。でも…嵌められたと言うのはどういうことだ?誰に嵌められてるんだ?」

誰に…か。

「正直、誰かは分かりません。だから誰に嵌められたのかどうかは、とりあえず脇に置いておきましょう」

「…なら、ルレイアやルリシヤが三日も連続で見た、あの悪夢は何だ?」

「それについては説明出来ます」

忌々しい話ではあるし、どういう原理で悪夢を見させてるのかは分からない。

でも、ある程度の仕組みは分かった。

「この船は、俺達を洗脳する為にあるんです。毎晩悪夢を見させられるのはそのせいです」

「洗脳だと…!?そんなことが…」

有り得ない、と言いかけて、しかしルルシーは口をつぐんだ。

洗脳という手段を現実的に用いることは、俺達にとっては珍しくない。

むしろ、俺はよく使う。

お仕事で女を落とすときは、大抵やってることだ。

少なくとも、どっかの化学兵器馬鹿共よりは、ずっと平和的な手段だ。

しかし、こんな方法ではやらない。

相手に無理矢理悪夢を見させ、精神的に弱らせた上で、洗脳するとは。

精神的に弱ってるところに付け入るのは常套手段だが、その為に相手に悪夢を見させるなんて、正気の沙汰ではない。

そもそも。

「…とりあえず、洗脳されていることは、分かった。でも…相手に強制的に悪夢を見させるなんてことが、可能なのか?」

俺達にとって当然の疑問を、ルルシーが口にした。

「それは難しい質問ですね。俺も有り得ないとは思いますが…でも、事実として俺達は三人揃って、連日悪夢を見ている」

信じられないし、そんな話は有り得ないと思う。

でも、俺達は実際に悪夢を見せられているのだ。

どんな手段を使っているのかは知らん。

どんな手段であったとしても、実際に悪夢を見せられていることが問題なのだ。

「飲食物に薬物でも混ぜられているのかもしれないな」

と、ルリシヤ。

まぁ、それはあるだろうね。

でも、それだけではない。

「考えられる手段としては…恐らく、その最たるものが、『白亜の塔』でしょう」

「『白亜の塔』…って言うと、あのでかい展望台だな?」

「えぇ。でもあれは、展望台なんかじゃない」

展望台…の、ような振りをしてはいるけども。

あの塔の、本当の存在理由。

それは。

「あの塔は…俺達を洗脳する塔です。あそこにいるだけで、俺達は目に見えない音響波を浴びて、その音響波が俺達の悪夢を誘発してるんでしょう」

「…!」

有り得ない話だ、って思ったろう?

事実は、小説より奇なり、ってね。