The previous night of the world revolution4~I.D.~

「…ルレイア。何の話をしてたんだ?」

シェルドニア語を解さないルルシーが、俺に尋ねてきた。

何の話…わざわざ訳して聞かせるほどの話もしていないが。

「俺が『上陸出来なくて暇ですね』って言ったら、あの人の大好きな展望台を勧めてくれましたよ。ってな訳で俺、食事が終わったらちょっと『白亜の塔』に上ってきます」

「また展望台…?一昨日も行っただろう」

「何度上っても楽しいらしいですよ。あの人曰く」

「…あ、そう。なら俺も行くよ」

ルルシーなら、当然そう言うと思った。

如何せん、先日展望台に上ったとき、俺は寝落ちしてしまったからな。

ルルシーも、俺を一人で行かせるのは心配なのだろう…けど。

「大丈夫ですよ。俺一人で言ってくるので」

「何でだよ。俺も行く」

「ルルシー、あなた昨日は夢見が悪かったんでしょう?部屋で良い子にしていた方が良いですよ」

「それはお前もだろ。俺に大人しくしろって言うなら、お前も大人しくしてろ」

もールルシーったら。我が儘なんだから。

そうじゃないんだよ。

「大丈夫。少し風に当たってくるだけです。一瞬だけ。すぐ戻りますから」

「…でも…」

「…ルレイア先輩。行くなら俺が行こう」

ルリシヤは、真剣そのものの眼差しで俺にそう言った。

…ルリシヤったら。さすが俺の見込んだ後輩。

俺と同じことを…彼も気づいているのだ。

だから、俺の代わりに自分が行こうとしている。

でも…過去の傷が痛むのは、ルリシヤとて同じこと。

しかも、俺にはルルシーという救世主がいるが…ルリシヤにはいないのだ。

だから、ルリシヤに行かせる訳にはいかない。

「いいえ、俺が一人で行きます」

「…ルレイア先輩」

「すぐ戻ってきますよ」

これは、ある種の賭けだ。

俺の懸念が、もし真実だったとしたら…。

そのときは、本当に不味いことになるかもしれない。