そして、その日の夜。

「…んー…」

「…大丈夫か?ルレイア」

あんなことがあったばかりだ。

横になるだけで、嫌でも昨夜のことを思い出してしまうだろう。

ルレイアはベッドの上に体育座りして、不満そうに唸っていた。

…寝なければ、夢を見ずに済むのだが。

昨日もあの騒ぎでろくに眠っていないのに。

さすがに、今夜も寝ずに一晩過ごす訳にはいかない。

「…ルレイア。俺が起きて…見張っててやる。またうなされてたら、すぐ起こしてやるから。だからお前は休め」

「でも、それじゃルルシーが眠れないじゃないですか。ルルシーだって昨日、ほとんど寝てないでしょ?」

「俺は良いんだよ」

そもそも、お前が寝てくれないと、俺だって心配で眠れないんだよ。

「じゃあ夜中に交替しましょうよ。午前一時になったら起こしてください」

「あ?」

交替だと?

先にルレイアが寝て、夜中に交替して、今度は俺が寝ろ、って?

…まぁ、良いだろう。

絶対起こしてやらない。朝まで寝てろ。

「分かった。夜中に起こすから。それまで寝ろ」

「ちゃんと起こしてくださいよ~?ルルシー、ズルしようとしてるでしょ。俺を寝かせておいて、自分は朝まで起きてるつもりでしょ」

バレてる。

「ズルなんてしねぇよ。ほら、早く寝ろ」

「はーい。お休みなさい」

ルレイアは呑気な返事をして、ぼふっ、とベッドに横になった。

「…眠れそうか?」

「ルルシーが頭を撫でてくれたら、寝られる気がする」

「分かった」

それくらいで寝てくれるのなら、いくらでも撫でてやる。

すると、ルレイアは。

「…いつにも増してルルシーが優し過ぎて、何だか調子が狂いますねぇ…」

なんて軽口を叩いていたので、気分は悪くなさそうだ。