「この旅行は、何かがおかしい。偶然と言うには、あまりに奇怪な出来事が起こっている」

「…何かがおかしいのは、俺も同感だ」

三人が同時に昔の夢を見て、しかもいつもは何でもないはずのその夢に、有り得ないくらい苦しめられている。

全ては、この船に乗ってから起きたことだ。

…しかし。

「…でも、何がおかしいって言うんだ?この船に、一体何がある?」

「…それが分からないのが辛いところだな」

どうやったら、三人が同時に昔の夢を見るんだ。

それも、この大地から離れた船に乗ってから。

旅行のせいだという根拠もない。単なる偶然が重なっただけだと言われれば、言い返す言葉がないのだ。

何かがおかしいのは分かる。

でも、何が?

何がおかしいって言うんだ?

「…まぁ、憶測ばかり重ねても仕方がない…。ルルシー先輩、そろそろルレイア先輩のところに帰ってあげてくれ」

「え、でも…」

疑問は尽きないし、問題は何も解決していない。

「今は何も分からないんだから、ここで頭を悩ませていても仕方ないだろう?」

「それはそうだが…」

「とにかく、今夜だ。今夜俺達がどんな夢を見るかで、明日どうするか考えよう」

…今夜…か。

ここまで悪夢の話をしていたら、嫌でもまた悪夢を見てしまいそうだが…。

「…分かった。明日、また話し合おう」

「あぁ、そうしよう。ルルシー先輩はルレイア先輩についていてやってくれ」

「そのつもりだが…でも、お前は大丈夫なのか?」

平気な振りをしているが、ルリシヤも昨日悪夢を見たのなら、しんどいはずだろう。

ルリシヤは俺達とは部屋が違うから、いざ苦しんでいたとしても、すぐには気づけないぞ。

しかし、ルリシヤは平気な振りを崩さなかった。

「俺は大丈夫だ。だから、ルレイア先輩に」

「…分かったよ」

ルレイアと言い、お前と言い。

平気じゃない癖に平気な顔をしやがる。

「大丈夫じゃなくなりそうなら、そう言えよ」

「あぁ、分かってる。ルルシー先輩は、やっぱり心配性だな」

お前達が心配かけるようなことばっかりしたり、言ったりするからだよ。全く。