何の夢…って。

俺の見た夢なんて、今はどうでも…。

「ルルシー先輩は、この船に乗ってから、昔の夢を見なかったか?」

「…それは…」

ルレイアの夢の方が強烈過ぎて、すっかり忘れていたが…。

…言われてみれば。

「…分からない。はっきりとは覚えていないが…でも、夢見が悪かったことは覚えてる」

「…そうか」

俺にとって、嫌な夢…ということは、昔の夢なのか。

ということは…俺達は…。

「…この旅行中…俺達は三人共、悪夢を見てるってことか」

「…あぁ。程度の差こそあれど…三人共悪夢を見てる。これが偶然だと思うか?」

「…」

『ホワイト・ドリーム号』に乗ってからというもの、俺達は三人共、おかしな夢を見ている。

寝ているときにどんな夢を見るかなんて、自分で選べるものではない。

偶然、昔の夢を思い出して気分が悪くなる…なんてことは有り得るだろう。

でも…三人が同時に昔の夢を見るなんてことが、有り得るか?

「…百歩譲って、三人同時に昔の夢を見ることがあったとしよう。旅行という、いつもと違う環境だからな。そういうことも有り得るかもしれない…」

…それだけでも、充分おかしいことだとは思うがな。

しかし、ルリシヤが気にしているのは、他のことだった。

「…だが、何故それでルレイア先輩があんなことになる?」

「…」

「…ルレイア先輩だけじゃない。情けない話だが、俺も…グリーシュの夢を見たとき、ルレイア先輩ほどじゃないが、身体が震えて、動悸がした。旅行前までは、昔の夢を見てもあんな風にはならなかった」

…その通りだ。

ルレイアだってそう。昔の夢を見るのは、昨夜が初めてではないはず。

これまでは、昔の夢を見ようが、あんなに取り乱したりはしなかった。

そこが問題なのだ。

「…でも、あのときルレイアは…体調が悪かった」

「そうだな。体調が悪いせいで、いつもは何でもない昔の夢に、過剰に怯えてしまった…それはあるかもしれない…。だが、俺は別段、体調が悪かった訳じゃない」

「…」

ルリシヤは、別に体調が悪かった訳じゃない。

それなのに昔の夢を見て、過剰に怯えてしまった。

俺も…本音を言うと、夢見が悪いせいで、本調子ではないのだ。

一人だけなら分かる。

でも、三人が同時に悪夢に脅かされるなんて…そんなことが、有り得るとは思えない。