「…そんな感じの夢だった。まぁ…悪夢だな」

「…お前は、大丈夫なのか?」

ルリシヤもそんな酷い夢を見たのなら。

きっと、今もしんどいはずだ。ルレイアと同じように。

「あぁ、平気だ。そのときは当然うなされて、酷い気分だったが…。でも、俺は咄嗟に目を覚ました。そして、隣室で二人が何やら騒いでいるようだったから、様子を見に行ったんだ」

…そういうことだったのか。

じゃあ、一歩間違えたら…ルリシヤは、悪夢を見続けたまま、誰に起こされることもなく朝まで苦しんでいたかもしれなかったんだな。

「もっと早く言えよ、馬鹿」

ルレイアのことしか頭になくて、ルリシヤがそんな風になっていたなんて知らなかった。

知っていれば、もっと…気遣ってやることも出来ただろうに。

「ありがとう。でも俺は大丈夫だ。ルレイア先輩の過去は知らないが、それでもルレイア先輩ほど酷い過去ではないし。何より、俺はもう過去のことは過去のことと割り切ってる」

「…」

…強がるなよ、この野郎。

こいつはいつも仮面で表情が分かりづらいし、ルレイアと同じく、辛いときに辛いと口にするような男ではない。

俺達に心配をかけまいと、立ち直った振りをしているが。

忘れてはいけない。ルリシヤは、親友であるグリーシュを、自分の目の前で失ったのだ。

その悲しみや、虚しさが、そう簡単に消えるはずがない。

今も平気な振りをしているものの、そんな夢を見せられて…内心、酷く動揺しているはずだ。

ルレイアの方が重症なものだから、余計言い出しづらいのだろうが。

ルリシヤだって、相当傷ついているはずだ。

大丈夫かと聞きたいが…そんなこと聞いても、絶対大丈夫としか答えないだろうからな。

「…お前まで無茶をするなよ。ルリシヤ」

「分かってる。本当に心配性だなルルシー先輩は。俺は大丈夫だと言ってるのに」

「お前らの『大丈夫』は、薄っぺらい紙みたいなもんだからな」

何の信用も出来ねぇよ。

「俺は本当に大丈夫だ。心配するなら、ルレイア先輩を心配してくれ」

「…」

…そんな話聞かされて、心配するなと言われて、心配せずにいられるほど…俺は薄情じゃない。

そりゃ俺はルレイアの方が大事だが、でもお前が傷ついているのに、無視していられるはずがないだろう。

そこのところ、分かってるんだろうな?

「俺のことはどうでも良い。それよりも」

「どうでも良い訳ないだろうが」

「どうでも良いことにしておいてくれ、今は。それよりルルシー先輩…ルルシー先輩は、昨日、何の夢を見た?」

「…は?」

ルリシヤに問いかけられて、俺は思わずすっとんきょうな声を出してしまった。