ルレイアは、夢を見ていたのだ。
昔の夢。
恐らくルレイアにとって、思い出したくもないほど辛い過去の記憶。
ルレイアが、こんなにも怯え、震えている訳だ。
立ち直っているように見えても、あの忌まわしい記憶は、ルレイアの中から消えた訳ではない。
現に今、こうして…息を吹き返して、ルレイアを苦しめている。
俺は猛烈に自分を責めた。
もっと早くに、俺が気づいていれば。
すぐにルレイアを、無理矢理にでも叩き起こしてやれば。
ルレイアに悪夢を見させることもなかったはずだ。
「あの頃の人達が…俺を見ていて…それで…」
「ルレイア…無理に話すことは…」
「それで、ルレイア先輩。身体の方は大丈夫なのか?」
俺はルレイアを制止しようとしたが、その前にルリシヤが、わざとそれを遮るようにそう聞いた。
一瞬、何を言ってるんだ、と思った。
ルレイアが大丈夫じゃないのは、見れば分かる。
しかし、ルリシヤが聞きたいのは、そんなことではなかった。
「…えぇ、大丈夫ですよ」
ルレイアは、青い顔で答えた。
大丈夫じゃないのは、誰の目から見ても一目瞭然だ。
それでも、ルリシヤはわざとらしく頷いてみせた。
「そうか、なら安心だな。良かった」
「ルリシヤお前…!何を、」
この状況で、何が安心なんだ、とルリシヤに食って掛かろうとした。
そのとき、ルリシヤが視線で俺を制止した。
え?
「じゃあ、俺は退散するとしようか。ルルシー先輩、あとは頼む」
「…!」
何のことはない。
ルリシヤは、自分がこの場を離れ、俺とルレイアを二人きりにする口実を作ったのだ。
ルレイアの過去について、詳しく知っているのは…『青薔薇連合会』でも、俺くらい。
まだまだ新参者であるルリシヤは、ルレイアの過去について、そう詳しくは知らないはずだ。
しかし、この様子を見る限り、決して愉快なものではない、と。
むしろ、ルレイアにとって酷く辛いものであったのだということを、ルリシヤは察したのだろう。
良くも悪くもこの男は、ルレイアに似て、察しの良い人間だ。
ルリシヤは、自分がこれ以上この場にいては、ルレイアが悪夢の内容について話せないと思って…それで、無理矢理退室する口実を作ったのだ。
大丈夫だということにして、自分はこの場を離れようと。
ルレイアが大丈夫でないことくらい、ルリシヤだって分かっている。
それでも、今ルレイアを支えてやれるのは、ルレイアの過去を知る俺しかいない。
そう思って、自分は身を引こうとしているのだ。
「それじゃ、また明日な。何かあったら呼んでくれ、ルルシー先輩」
ルリシヤはさりげなく立ち去る振りをして、一瞬だけアイコンタクトでじっ、と俺を見た。
言葉にしなくても分かる。
あとは頼む、と…。ルリシヤは、そう言っていた。
「あぁ。また明日な」
俺も同じく、アイコンタクトで答えた。
後輩にここまで気を遣わせたのだ。
あとは、俺が何とかしよう。
昔の夢。
恐らくルレイアにとって、思い出したくもないほど辛い過去の記憶。
ルレイアが、こんなにも怯え、震えている訳だ。
立ち直っているように見えても、あの忌まわしい記憶は、ルレイアの中から消えた訳ではない。
現に今、こうして…息を吹き返して、ルレイアを苦しめている。
俺は猛烈に自分を責めた。
もっと早くに、俺が気づいていれば。
すぐにルレイアを、無理矢理にでも叩き起こしてやれば。
ルレイアに悪夢を見させることもなかったはずだ。
「あの頃の人達が…俺を見ていて…それで…」
「ルレイア…無理に話すことは…」
「それで、ルレイア先輩。身体の方は大丈夫なのか?」
俺はルレイアを制止しようとしたが、その前にルリシヤが、わざとそれを遮るようにそう聞いた。
一瞬、何を言ってるんだ、と思った。
ルレイアが大丈夫じゃないのは、見れば分かる。
しかし、ルリシヤが聞きたいのは、そんなことではなかった。
「…えぇ、大丈夫ですよ」
ルレイアは、青い顔で答えた。
大丈夫じゃないのは、誰の目から見ても一目瞭然だ。
それでも、ルリシヤはわざとらしく頷いてみせた。
「そうか、なら安心だな。良かった」
「ルリシヤお前…!何を、」
この状況で、何が安心なんだ、とルリシヤに食って掛かろうとした。
そのとき、ルリシヤが視線で俺を制止した。
え?
「じゃあ、俺は退散するとしようか。ルルシー先輩、あとは頼む」
「…!」
何のことはない。
ルリシヤは、自分がこの場を離れ、俺とルレイアを二人きりにする口実を作ったのだ。
ルレイアの過去について、詳しく知っているのは…『青薔薇連合会』でも、俺くらい。
まだまだ新参者であるルリシヤは、ルレイアの過去について、そう詳しくは知らないはずだ。
しかし、この様子を見る限り、決して愉快なものではない、と。
むしろ、ルレイアにとって酷く辛いものであったのだということを、ルリシヤは察したのだろう。
良くも悪くもこの男は、ルレイアに似て、察しの良い人間だ。
ルリシヤは、自分がこれ以上この場にいては、ルレイアが悪夢の内容について話せないと思って…それで、無理矢理退室する口実を作ったのだ。
大丈夫だということにして、自分はこの場を離れようと。
ルレイアが大丈夫でないことくらい、ルリシヤだって分かっている。
それでも、今ルレイアを支えてやれるのは、ルレイアの過去を知る俺しかいない。
そう思って、自分は身を引こうとしているのだ。
「それじゃ、また明日な。何かあったら呼んでくれ、ルルシー先輩」
ルリシヤはさりげなく立ち去る振りをして、一瞬だけアイコンタクトでじっ、と俺を見た。
言葉にしなくても分かる。
あとは頼む、と…。ルリシヤは、そう言っていた。
「あぁ。また明日な」
俺も同じく、アイコンタクトで答えた。
後輩にここまで気を遣わせたのだ。
あとは、俺が何とかしよう。


