The previous night of the world revolution4~I.D.~

「何です、鳩が豆鉄砲食らったような顔をして」

「え、いや、だって…。え…?」

「それとも、私とデートなんて行きたくないですか」

「そんなことはない!行きたい!物凄く行きたい!」

だから今朝だってフューニャの幻が見えて、その幻と一緒にデートに行ったんだから。

「なら行きましょう。しばらくあなたとデート出来なくて、私も寂しかったので」

「い、良いのか…?俺とデートなんて…」

「良いのかって何ですか。あなたおかしいですよ。いきなり首輪なんか嵌めたりして…。いえ、それは趣味なのかもしれませんけど…」

いや趣味じゃないです。

そんな趣味は全く。

そうじゃなくて。

「だってフューニャ…。最近、ずっとお義姉さんと遊んでばかりで」

「…」

「俺はもう忘れられたんだって。べっ…別居を切り出されるかもしれないと思って」

「…」

「ならせめて犬として飼ってもらおうと思って、それで首輪…」

フューニャは虚を突かれたような顔をして、それからふっと笑った。

「…あなたという人は、全く…」

そして、優しく俺の首輪を外してくれた。

犬から人間に戻った瞬間である。

「ちょっと私が他の人と仲良くしてたら、すぐこれなんですから」

「だ、だって…」

「でも、あなたにここまで思い詰めさせてしまったのは、私が悪かったですね。ごめんなさい、ルヴィアさん」

フューニャが悪い訳じゃない。

俺はぶんぶんと首を横に振った。

「心配しなくても、あなたと別れたりしませんよ、私は」

「ほ、本当に…?」

「当たり前じゃないですか。私にとって、あなたは一番なんですから」

いっち…ばん?

何?一番どうでも良いとかじゃないよね?

「あなた以上に好きな人も、大事な人もいませんよ、私には」

「フューニャ…」

「だから、私とデートに行ってください」

そこまで言って、フューニャはハッとして、それから顔を赤らめてそっぽを向いた。

「…別に私は、あなたとデートに行きたい訳じゃありません」

「…」

「行きたい訳じゃありませんからね」

…ちらっ、とこちらを見るフューニャ。

可愛い過ぎて、胃が捻きれそう。

「…ふっ…フューニャぁぁ!」

あまりのいとおしさに、俺はフューニャをしっかと抱き締めた。

俺の嫁がフューニャで良かったと、心から思った。