ルヴィアがいること自体は、特に珍しくないと言うか。
嫁と水族館デートする、と言っていたから、まぁ偶然かな、で済ませられる。
しかし。
ルヴィアは、幽霊かと思うほどに青白い陰気な顔で、虚ろな目をしていた。
…成程、ルレイアの言う通り。
間違いなく、これは嫁に捨てられた顔だ。
こいつ今、敵対勢力に襲われたら、間違いなく死ぬぞ。
「ルヴィア、おいルヴィア、大丈夫か」
「…」
「しっかりしろルヴィア。目を覚ませ」
ルヴィアの肩を揺すると、ルヴィアはハッとして、
「あれ…?嫁の声が聞こえる…?」
「落ち着け。それは空耳だ」
俺の声だよ、俺の。
聞こえる声全てが嫁のものだと思ってないか、お前。
ルヴィアのこの惨めな姿…間違いない。
「あなた、まぁた嫁に捨てられたんですか?あはは。惨めですね~!」
「こらっ、ルレイア!指差して笑うな!」
見てみろ。ルヴィアが、ずーんと落ち込んでしまってる。
「…俺なんて、あのイワシの群れの一匹ほどの価値もないんです。イワシはイワシらしく…一緒に泳いできます」
「落ち着けルヴィア。何水槽に入ろうとしてるんだ」
と言うか入れないだろう。何処に行こうとしてるんだ。
「お前、何でここにいるんだ?一人なんだよ…な?」
「…はい」
だよね。
すると、またルレイアが余計なことを言った。
「それはお気の毒ですねぇ。俺は嫁のルルシーと、夫婦でデートですよ。水族館デート。うふふふ」
「ルレイア!馬鹿!」
「…!」
嫁だのデートだの夫婦だの、今のルヴィアにとっては、禁句だ。
案の定。
「…俺には、もう陸で生きてる資格はない…。入水してきます」
「待てルヴィア、行くな。何考えてる」
お前が死んだら嫁と俺が悲しむぞ。やめろ。
「大体お前、何で一人なんだ。嫁と来るんだって言ってたじゃないか」
まさか、二人で来たけど、人混みではぐれました、って訳でもないんだろう?


