「る、ルレイア…!?お前、一体どうしたんだ…!?」

「ぶぼぁっ!ルレ公が…!ルレ公がおかしくなってる!」

「どうしたのルレイア!?お腹痛いの!?」

「落ち着くんだ先輩方。きっとこれは洗脳の後遺症だ。ここはルリシヤ式カウンセリングで」

「ちょ、ちょっとどうしたんですか皆さん」

ルレイアの凶行に、驚いてないのはアイズレンシアだけだった。

あとは全員、目を丸くしていた。

だって、ルレイアが。

…白い服を着てる。

飾り気のない白いシャツに、紺のジーンズを履いて。

靴も普通のスニーカーだし、ネイルもしてない上に顔は素っぴんだ。

アクセサリーの一つもつけていない、シンプル・イズ・ベストな格好。

ルレイアがこんな…普通の格好をするなんて。

頭がおかしくなったとしか思えない。

よく考えたらこれが普通の格好なのだから、むしろまともになったと喜ぶべきところなのだろうが。

いつもが普通じゃなさ過ぎて、こうして普通の格好をされると違和感しかない。

「ルレ公からゴスロリを取り上げたら…何が残るんだ!?エロスしか残らんじゃん!」

アリューシャも大概失礼なことを言ってるが、その通りだから誰も否定出来ない。

「ちょっと皆さん。驚き過ぎですよ。俺がちょっとシンプルな格好してるからって~」

それだけ普段がおかしいんだよ。

「確か、アシュトーリアさんから直々に頼まれたんだったよね。『青薔薇連合会』と新しく契約を結んでもらう為に、貴族の嫡子を落として欲しいって」

ルレイアの代わりに、アイズがそう説明してくれた。

成程、そういうことだったか。

アイズが驚かなかったのは、事情を聞いていたからだったらしい。

「そうなんですよ~。相手は貴族の、しかも男ですよ男!いくら俺が男でもイケるからって~」

「そうか…」

男か…。まぁお前なら相手が女でも男でも、大丈夫だと思うが…。

「…嫉妬しないでくださいね、ルルシー」

「…は?」

ルレイアは、心配そうな顔で俺にそう言った。

何?今凄く気持ち悪いこと言わなかった?

「あくまでお仕事の一環で落とすだけですから。俺の本命はいつだってルルシーですよ。帰ったらあなたと一杯えっちするので、待っててくださいね」

「あーはいはいさっさと行ってこい」

「あぁ、アシュトーリアさんも随分気に病んでいたよ。ルレイアにはルルシーという嫁がいるのに、仕事とはいえ他の男とそういう関係になるのは、ルルシーに申し訳ないわ、って」

と、アイズ。

ありがとうアシュトーリアさん。余計な気遣いです。

「もしどうしても気になるなら、断ってくれても良いって、アシュトーリアさんが…」

「良いよ別に。誰でも落としてこい。俺は断じてお前の嫁じゃないからな」

「も~ルルシーったら、ツンデレなんですから…。いじけちゃってか~わいい」

俺怒って良いよな?

「速攻で落として速攻で帰ってくるので!待っててくださいね~ルルシー!」

「はよ行け」

いちいち抱きついてくるな。

ルレイアはひらひらと手を振って、颯爽と俺の執務室を出ていった。