だって、冷静に考えてみろ。

俺は『ホワイト・ドリーム号』で洗脳されて、早々にフェードアウト。

それどころか、シェルドニア本国に着いてからは、元縦ロールなんちゃってゆるふわ系お嬢様(笑)に良いように使われて、ルルシー達の敵に回ってしまった。

完全に悪役じゃないか。

そんな中、ルルシー(ヒロイン)を支え、俺(悪役)を倒す為の算段を立てたのは誰か。

格好良く仮面を翻し、見事俺を出し抜いて活躍したのは誰か。

…全部ルリシヤじゃん。

今回の格好良いシーン、全部ルリシヤ。

…で、俺は?

「ルリシヤに良いとこ全部持っていかれてるじゃないですか!」

俺にとっては、色々な意味で死活問題だというのに。

ルルシーは、つまらなさそうに。

「何だそんなことか…」

と、言った。

何だそんなことか、だって!?

「大変なことですよ!俺が格好良く活躍してMVPに輝くのがいつもの流れじゃないですか!それなのに今回は…!」

「ふふふ。時代の流れは仮面の後輩に来ているということだな。これはもう世代交代だ」

どやぁ、と渾身のどや顔を決めるルリシヤ。

なんてことだ。

「嫌ぁぁぁぁ!ルルシぃぃぃ!助けて!奪われる!色々大変なものを奪われてしまう!」

「奪われるって何をだよ…」

それは人に言えないあれこれだよ。

「俺の人生の主人公は俺のはずなのにぃぃぃ!ルリシヤに盗られる~っ!!」

「何言ってんだお前は…。心配しなくてもお前の人生の主人公はお前だよ…」

「アリューシャの人生の主人公もアリューシャだぜ!」

「そうだね。アリューシャも主人公だね~」

後ろでとても平和なアイズ親子。

違うんだよ。これは死活問題なんだよ。

するとルリシヤが、とんでもないことを言い出した。

「この流れでヒロインのルルシー先輩は俺がもらうとしよう。主人公とヒロインはいつだってセットだからな」

「嫌ぁぁぁぁ!ルルシーまで盗られる~っ!」

ルリシヤ…!あなたという人は。

優秀な後輩だと思っていたが、どうやら袂を分かつときが来たようだな。

「…そうはさせません。主人公は俺ですから。ルルシーは俺のヒロインですから!まだまだ若者には渡しませんよ!」

「ふふ。それはどうかな?俺の主人公力はルレイア先輩に負けず劣らず…。ルルシー先輩も新しい主人公候補の俺に胸をときめかせ…」

「それは浮気ですよルルシー!うわぁぁぁん俺のルルシーなのにぃぃぃ!」

「…いい加減にしろ、お前ら。俺はヒロインではないし胸をときめかせてもいない」

呆れ半分、怒り半分のルルシーであった。

「ですよね!ルルシーは俺のルルシーですもんね…!今までもずっと、これからもず~っと俺のルルシーですもんね!」

「はいはい。そうだな」

そして、俺もまたず~っとルルシーのものだ。

そうでないなら、俺の人生に意味なんてない。

と、いう訳なので。